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ワクチン接種証明書“年内デジタル化”は百年早い?利用拡大に賛否両論。いまだ多い「打ちたくても打てない」若者、異物混入で揺らぐワクチンの信頼性

新型コロナワクチンの接種証明書、いわゆるワクチンパスポートに関して、国内での活用の在り方を検討していく考えを加藤官房長官が示し、年内をめどにワクチンパスポートのデジタル化を実現させると語った

7月下旬から申請の受付が始まったワクチンパスポートだが、現在は海外渡航者向けに紙での発行にとどまっている。しかし今後は、2次元コードの発行やデジタル証明書アプリを開発して、広く利用してもらうことも検討しているようだ。

加藤官房長官は記者会見で「デジタル化ができれば、国内でも活用していただくことは十分考えられるのではないか」と述べたという。

尾身会長も認めた「ワクチンパスポート活用の議論」

25日の記者会見で、ワクチンパスポートの飲食店や旅行などでの活用に言及し「日常生活や社会経済活動の回復もしっかり検討する」と語っていた菅首相だが、上記の加藤官房長官の発言は、そんな菅首相の意向を受けたものに。

ただ政府内では、ワクチンパスポートの国内利用に関して「接種の有無によって不当な差別的取り扱いを行うことは適切でない」という慎重な声もあった。しかし、逆に経済界からは活用して欲しいという強い要望が出ていたという。

いっぽうで、新型コロナ対策分科会の尾身会長も、8月中旬ごろにインターネット番組に出演した際、仮に接種が国民の7割まで進んだとしても感染が下火になることは絶対にないとしたうえで、「ワクチンの接種や検査の陰性を証明できた人が経済活動を再開できるようにするなど新たなルールを議論する時期が迫っている」と主張。医療界からもある意味でのお墨付きが出る格好となっていた。

感染拡大に関しては、もうある程度は避けられないものとして、それでもワクチン接種が済んだ人からでも、どんどん経済を回していかなければならない。……そんな危機感が、ワクチンパスポートのデジタル化、それによる活用シーンの拡大を急がせる動機となっている模様。昨年から続くコロナ禍で、飲食店や観光業界をはじめとした多くの業界が瀕死のダメージを追っている状況をみれば、確かにそういう動きになるのは、致し方ないところかもしれない。

国民の間で根強い「時期尚早」の声

ただ、その反面でワクチンパスポートの活用シーン拡大に関しては、否定的な意見も多数。要は「それより前に、やることがあるだろう」という声だ。

まずあげられるのが、今後経済を回していくことが期待される年齢層に、ワクチンが十分に行き届いていないという現状。特に若者層に関しては深刻で、東京・渋谷で27日に開設された16~39歳を対象にした接種会場も、早朝から希望者が殺到し、午前7時半には予定していた当日の枠がすべて埋まる事態に。それに対し、北海道では80代の男性が4回接種したと報じられるなど、ワクチンが必要な人たちに適切に行き渡っているとは、到底考えられないような状況が起こっている。

さらに、今後の接種率向上の進捗に影を落としそうなのが、先日判明したモデルナワクチンへの異物混入だ。これによってロット番号3つ分のワクチン、約163万回分が使用中止となり、近々に接種予定だった人たちのなかにはそれが中止となり、今後の予定に関しても、折からのワクチン供給不足により不透明になっているというケースが頻発しているようだ。

また、当初はゴム片だとされていた混入異物だが、実際はどうやら金属粉だったようで、モデルナによるとスペイン工場での製造工程の中で混入が起きたのでは、という話。さらに、ネット上ではそれ以前の8月上旬にも、異物混入が認められて回収される事態が起きていたという話もあがっており、そのワクチンは今回発表された3つのロット番号以外のものだったという。

若者などの間でも“打ちたくても打てない”という人々が多く存在するにも関わらず、それらへ十分にワクチンを供給できる体制がいまだに整っていない。さらに政府がしきりに“安心・安全”と呼びかけるワクチンに対しての信頼性も、ここに来て揺らぎ始めており、ワクチンを忌避する層がさらに増える恐れも招きつつある現状。そんな最中に、ワクチンパスポートの活用を……といわれても、「百年早いわ」といった反応になるのは、当然の話だろう。

さらに、そのような状況下でワクチンパスポートの活用シーンを拡大してしまえば、政府が当初懸念していた「接種の有無による不当な差別的取り扱い」が、より顕著なものとなる可能性も。経済の回復に向けて、ある段階になればワクチンパスポートの活用は必要となるのは理解できるものの、そのタイミングは早急になのか、あるいはもっと先なのか、意見は大いに分かれるところだろう。

Next: 「接種証明より抗体価検査の結果証明の方がいいんじゃないの」

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