米債務上限引き上げ問題も危機にはならない
また、アメリカの債務上限引き上げ問題にしても、デフォルトになる前に解決してしまう可能性のほうが大きいように思う。いま、最悪の事態を回避するためにジャネット・イエレン財務長官は、大手投資銀行のCEOが債務上限の引き上げ法案の可決を議員に働きかけるように提案している。
「JPモルガン・チェース」のジェイミー・ダイモン、「シティグループ」のジェーン・フレイザー、「ウェルズ・ファーゴ」のチャーリー・シャーフ、「バンク・オブ・アメリカ」のブライアン・モイニハン、「ゴールドマン・サックス」らのCEOにイエレン財務長官から直接電話があったという。
また、民主党も共和党も2022年11月に行われる中間選挙を見据えて選挙戦の準備を始めている。この結果に2024年の大統領選挙がかかっているので、絶対に負けられない戦いだ。そのようなときに、債務上限引き上げ問題でデフォルトしてしまうと、議会の民主、共和両党に対する国民の批判が強まり、どちらの党も有権者の支持を失うことにもなりかねない。
そのように考えると、おそらく債務上限引き上げ法案は可決され、デフォルトを引き起こすことはないのではないかと思う。
本当の危機は「労働力不足」
実はいま、主要メディアで報道されている危機が水面下で進行している。それは、労働力不足によるサプライチェーンの寸断という状況だ。
いま世界各地で新型コロナウイルスのパンデミックが緩和し、経済活動が徐々に再開されるにしたがい、いままで長期のロックダウンや行動規制などで抑制されてきた国内の消費が急速に回復している。それにもかかわらず、それを充足する供給が追いついていないのだ。
これは、あらゆる産業分野に見られる現象になりつつある。これが背景となり、あらゆるモノの価格が急上昇しているのだ。
その主な原因は、当メルマガの前回の記事にも書いたように、労働力不足によるサプライチェーンの寸断だ。
IT機器のサプライチェーンの一端を担っている東南アジアの国々では、まだロックダウンが続いているところもあり、それが原因で労働力不足が生じている。また新型コロナウイルスの完全なコントロールに成功したとされる中国では、感染者が一人でも発見されると、港湾や工場を完全に閉鎖するので、そのたびに生産と物流が止まってしまう。
しかし、サプライチェーンの寸断とそれによるモノの価格の上昇が、新型コロナウイルスの対策による労働力不足によってもたらされたものであれば、しばらく時間が経つと解決されるはずだ。
もちろん、この冬にかけて第6波のパンデミックがある可能性は否定できないが、このままパンデミックがピークアウトして落ち着くと、労働者不足も解消され、サプライチェーンも元に戻るはずだ。