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「インフレ通貨」米ドルは買いか売りか。FRBはバランス取りに必死、日銀・ECBが金融引き締めに動けばドル危機へ=斎藤満

現在の米ドルは、インフレ高進が続くなかで潜在的な下落リスクを抱えるうえ、金利でこのインフレをカバーできない状況にあります。それでもFRBの積極的な引き締め策によってインフレを抑制するとの期待があり、売り買いのバランスを維持し、下落を回避しています。今後の展開はFRBの対応いかんです。インフレ通貨ドルは買いでしょうか、売りでしょうか。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年2月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

象徴的な1月CPI発表時の市場の乱高下

主要国の中で最もインフレが進み、積極的な利上げが予想されている通貨が米ドルです。

一昨年からドル高傾向が強まりましたが、最近は利上げが迫っているわりにドルの動きが不安定になっています。ウクライナ危機など、地政学リスクによって、退避通貨、安全資産が買われやすくなっている面はありますが、ドルも世界の中では安全資産、安全通貨のはずです。そのわりにドル高が進みません。

市場の混乱を象徴する動きが、1月の米国CPI発表時に見られました。現地時間2月10日朝に発表された1月の消費者物価は前月比0.6%、前年比7.5%の上昇となり、市場予想を上回り、40年ぶりの高い上昇となりました。この時の市場の反応は、まずドルが買われ、主要6通貨に対するドル指数は前日比0.5%の上昇を見せました。金利が急上昇したこともあります。

しかし、その後すぐに流れが変わり、むしろドルが下落し、一時は前日比0.4%の下落まで売られました。そして最後はほぼ前日並みの水準に戻りました。

予想以上に高いインフレ率を見て、市場はドル買い、ドル売りと狼狽しました。インフレ懸念による金利上昇期待がドル買いを誘った一方、インフレ通貨ドルを売る動きも出たと見られます。

似て非なる強い景気とインフレ

2020年春のコロナ禍の市場混乱から、いち早く立ち直りを見せたのが米国であり、ドルでした。

FRBの積極的な金融緩和でいったんはドル売りも見られましたが、これとともにトランプ政権が大規模なコロナ支援策を打ち出したことから、世界経済は中国に続いて米国がいち早く回復を見せ、一時は米国経済のひとり勝ちの様相を強めました。

この強い経済を背景に、米国での金利先高観が醸成され、ドル高が進みましたが、当初はインフレがない中で、「強い米国経済」という景気面の強さがドル買いの要因となりました。

そしてその年の秋以降、米国でインフレ率が上昇を見せるようになり、長期金利が上昇を見せましたが、ここでも世界で数少ない金利高通貨ドルが買われました。

このころ、FRBはインフレ率の上昇を、コロナ規制の解除に伴う需要の集中がもたらす一時的(transitory)なものと評価しました。市場もこれを信じ、インフレは一時的とみる向きがほとんどでした。従ってこのころのドル買い需要は強い米国経済による金利先高観、長期金利高でした。

つまり、インフレ率の上昇は一時的で、これが定着しないように、FRBが適切な対応、つまり早めに金融政策を調節してインフレを回避するとの信頼がありました。インフレにならないよう、金融を引き締め、金利が上昇するなら、高金利・低インフレのドルは買いとなります。

Next: ドルは買いか売りか。購買力平価(PPP)はインフレで下落

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