来年4月の「こども家庭庁」発足に向け、政府は17日に「設立準備室」を設置しました。いじめや虐待、少子化などの課題を解決する司令塔となることが期待されています。しかし中身を見ると、どうしても問いたいテーマが出てきます。「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのでしょうか?(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2022年6月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
来年4月に設置「こども家庭庁」とは?
来年4月の「こども家庭庁」の発足に向け、政府は17日に「設立準備室」を設置しました。
準備室では予算や人員の確保などに加え、子どもの教育や保育の実務を担う地方自治体や民間企業とのネットワークづくりに取り組む方針です。
準備室は職員およそ80人体制で業務を開始し、今後、内閣府の子ども・子育て本部や厚生労働省の子ども家庭局の職員のほか、民間企業や地方自治体からも人材を起用して、合わせて300人ほどの規模とする予定で、全員が「こども家庭庁」の職員に移行するということです。
さらに、民間や地方自治体との人材交流も積極的に行うとしているとのことです。
いまこども政策を担当しているのは、内閣府の「子ども・子育て本部」と、厚生労働省の「こども家庭局」で、この組織をごそっと「こども家庭庁」に移動させるようで、これが職員規模300人になるようです。
同じ子ども政策をしている文部科学省と、厚生労働省の中でもこどもの医療に携わる部門は「こども家庭庁」に移管しないようです。
あれ、全面統合ではないのですね…。なんか、各省庁間の既得権益を守るせめぎあいの跡が、伺えそうですね。
「こども家庭庁設置法」や、去年12月に閣議決定された基本方針によれば、総理大臣直属の機関として内閣府の外局に「こども家庭庁」は設置され、子ども政策担当の内閣府特命担当大臣を置いて、各省庁などに子ども政策の改善を求めることができる「勧告権」を持たせるとしています。
「勧告権」とは、複数の行政機関にまたがる問題について、役所の縄張り意識や縦割り行政の弊害を越えて解決できるよう、他の行政機関(あるいはその長)に対して意見を提出できる権利のことです。
ただ実際にこどもの支援等を行うのは、依然、各省庁であったり地方自治体であったりする部分もあります。
勧告をするのは良いが、実際に動いてくれているのかどうかのチェックはどうするのか、実際にこどもたちに直接支援が行き届くのかどうかに対してどこが責任を持つのかは、はっきりさせてほしいです。
先程の文部科学省や厚生労働省医療部門の統合への抵抗が、組織の一本化を阻んでいる中での「勧告権」って、実際どう機能するのでしょうね。
子どものため?それとも、少子化対策のため?
庁内には有識者などをメンバーとする「こども家庭審議会」が設置され、子どもや子育てに関する重要事項や、子どもの権利や利益を擁護するための調査や審議が行われる予定になっています。
子どもの意見を政策に反映させるため、直接意見を聞き取ることも必要に応じて実施することになっているとのことです。また、今回の法律には、5年をめどに組織や体制のあり方を検討し、必要に応じて見直す規定も盛り込まれています。そのときどきの時代の求めに応じて、臨機応変に組織を変えることができるようになっていると説明しています。
ここで、どうしても問いたいテーマがあります。
「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのか。