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来春始動「こども家庭庁」は選挙に向けた人気取りで終わるか。“こどもの命”と”少子化対策”、どちらを重視?=原彰宏

「こども家庭庁」の3部門

こども家庭庁の中は、「企画立案・総合調整部門」「成育部門」「支援部門」という3つの部門に分かれます。

それぞれの担務を書き並べてみます。

<企画立案・総合調整部門>

・子ども政策に関連する大綱を作成・推進
・個々の子どもや家庭状況、支援内容等のデータベース整備

こんなもの当たり前のことで、ことさら強調することなのでしょうかね…。

<成育部門>

・教育・保育内容の基準を文部科学省と共同で策定
・「日本版DBS」の導入検討
・「CDR:チャイルド・デス・レビュー」の検討

「日本版DBS」とは、簡単に言えば、子どもの性被害を防ぐため、子どもと関わる仕事をする人の犯罪歴をチェックするものです。

イギリスのDBS(Disclosure and Barring Service/Disclosure:開示、Barring:障壁・バリア)を参考にしたもので、子どもたちを性犯罪から守るため、保育教育現場に性犯罪者を立ち入らせないようにする仕組みになります。

菅総理大臣が「『日本版DBS』をこども庁の政策の柱に」と言及したことが話題になりました。過去の性犯罪歴は、警察記録を検索することになります。教師や保育士をチェクするだけでなく、部活コーチなどのボランティアやPTA役員など、子どもと関わるすべての人をチェックするようです。今は導入検討段階です。

この際、誰が警察と連携を取っていくのか、その指揮系統もさることながら、現場でうまくオペレートできるのか、まだまだ課題は残りそうです。

「CDR:Child Death Review」とは、「予防のための子どもの死亡検証制度」で、子どもが死亡した時に、複数の機関や専門家(医療機関、警察、消防、その他の行政関係者等)が、子どもの既往歴や家族背景、死に至る直接の経緯等に関する様々な情報を基に検証を行うことにより、効果的な予防策を導き出し予防可能な子どもの死亡を減らすことを目的とするものと説明されています。こちらも検討段階です。
※参考:都道府県チャイルド・デス・レビュー(CDR:予防のための子どもの死亡検証)体制整備モデル事業の手引き – 厚生労働省子ども家庭局 母子保健課 ※PDFファイル

<支援部門>

・虐待やいじめ対策
・「ヤングケアラー」の支援
・施設や里親のもとで育った若者らの支援

個人的には、この分野の拡充に注目しています。

こどもの貧困は大きな社会問題です。満足に学校に行けない子どもたち劣悪な環境で生活を強いられている子どもたちひとり親家庭の貧困ネグレクト、虐待…。

ヤングケアラーの子どもたちへの対応も大きな社会課題です。ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どもをいいます。令和2年度に「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」が行われ、子ども本人(中学生・高校生)を対象としたヤングケアラーの全国調査が初めて行われた。世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生5.7%、全日制高校2年生4.1%であるなどの実態が明らかとなりました。児童養護施設には、約2万5,000人の子どもたちが暮らしています。入所理由の65%は「虐待」です。また児童養護施設では、原則18歳になると退所して自立した生活を送ります。退所後は頼れる大人がいなかったり、経済的な不安があったりするため、進学を選択しづらい現状があります。また、進学するための受験料や入学金、4月以降の生活費などの諸費用捻出のため、受験直前でもアルバイトを続ける例もあります。そのため、進学したくてもできない子どもが多数存在しています。

その他「こども家庭庁」では、重大ないじめがあった場合には、文部科学省に説明や資料の提出を求める勧告などを行うとあります。障害児の支援や施設や里親のもとで育った若者などに対しての支援も担うとしています。

Next: 「こどもの貧困」問題に対処できるか?スローガンは立派だが…

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