「こども家庭庁設置法案」の概要
ここで「こども家庭庁設置法案」の概要を見てみましょう。
こども(心身の発達の過程にある者をいう。以下同じ。)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うとともに、当該任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とするこども家庭庁を、内閣府の外局として設置することとし、その所掌事務及び組織に関する事項を定める――
とあります。なんのこっちゃ~。霞ヶ関文学は読解困難ですね。さっぱりわかりません。
「子育てにおける家庭の役割の重要性」という部分だけが、無理やり押し込んだイメージがあり、偏見かもしれませんが「家庭」という言葉を省庁名に無理やり入れたことによるものかと思ってしまいます。
それで、こどもの利益だの権利だの言っていますが、いったい何をどうするところなのでしょう…。
やはり同じ「問い」が浮かびます。「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのか。
新しい省庁を作らないと「縦割り」は解消できないのか?
マスコミでの解説記事には、「こども家庭庁」を説明する前置きとして、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は去年1.30で、6年連続で前の年を下回っているという、日本を取り巻く子どもをめぐる状況を持ち出してきています。
この流れで、「こども家庭庁」創設の意義を、少子化に歯止めがかからない中、省庁の縦割りを排し、これまで組織の間でこぼれ落ちていた子どもに関する福祉行政を担う……としています。
「省庁の縦割りを排し」…。いつまで日本の組織で“弊害だ”と言われ続けてきたのに「縦割り」状態が続いているのでしょう。
これって変える気ないですよね。縦割りを排除するには、わざわざ新しい省庁を作らないとできないのでしょうか。
そういう意味では、「デジタル庁」は何をしているのでしょうね。
「幼保一元化」は見送り
今回の「こども家庭庁」においては、文部科学省が所管する“幼”稚園と、厚生労働省が所管する“保”育所を一本化する「幼保一元化」が見送られました。
文部科学省が、幼稚園の管轄権限をしっかりと握って離さなかったようです。省庁の縦割り打破の掛け声も、前述の通り、文部科学省と厚生労働省からの抵抗があったようです。
もう一度この「問い」を出してきます。
「こども家庭庁」は、こどもの命を守るためのものなのか。それとも、少子化対策のためのものなのか。
「こども家庭庁」が創設されれば、こどもの虐待やいじめは防ぐことができるのでしょうか…。