日本の主要メディアでもウクライナの劣勢が伝えられるようになってきたものの、いまだにアメリカを始めとした西側諸国からの大型火器の武器支援でウクライナは反撃に転じ、ロシア軍を撃退するという希望的な観測を述べる専門家が多い。しかし海外のレポートや報道を見ると、こうした希望的な観測を許さないほど、ウクライナ軍の敗色が濃くなっている。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年6月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
敗色濃厚なウクライナの戦況
日本の主要メディアでもウクライナの劣勢が伝えられるようになってきたものの、いまだにアメリカを始めとした西側諸国からの大型火器の武器支援でウクライナは反撃に転じ、ロシア軍を撃退するという希望的な観測を述べる専門家が多い。
しかしこうした観測は、ワラにもすがるように、ウクライナ軍に有利なわずかな情報にしがみついているだけのように見える。
東部ドンバス地方を中心とした戦況は、こうした希望的な観測を許さないほど、ウクライナ軍の敗色が濃くなっている。こうした状況は日本ではほとんど報道されることがないので、今回の記事で書くことにした。
ウクライナ戦争の戦況の詳細は、スイス参謀本部の元大佐でNATO軍の一員としてウクライナをモニターしていたジャック・ボー、また複数の専門家の集まりである「ザ・デュラン」、米国防総省出身と思われる人物の分析を掲載する「ドレイゼン・レポート」、米軍情報将校で元国連核査察官のスコット・リッター、ロシア軍の動きに詳しい軍事アナリスト、アンドレイ・マリヤノフの分析、米軍出身の分析者、ブライアン・バーレティック、そして、世界で300万人の読者を持つ大手誌、「アジア・タイムス」が毎日行っている戦況報告である。
これらのソースはほぼ同じ戦況を報告しており、ズレがない。客観的な現実を知るにはもっともよいソースである。
このなかでも、「ドレイゼン・レポート」を発信しているジェイコブ・ドレイゼンは突出している。経歴の詳細は一切発表していないのではっきりとは分からないが、ロシア語に非常に堪能で、ロシア内部の情報に詳しい。「ドレイゼン・レポート」は戦況を詳しく報告するだけではなく、次にどうなるのか予想をして、そのすべてを的中させている。分析者のなかでも突出した存在だ。
「アジア・タイムス」の戦況分析
それでは、「アジア・タイムス」がほぼ毎日掲載している戦況分析と評価を見てみよう。「アジア・タイムス」は、複数の軍やシンクタンクの情報源に基づくウクライナの戦況レポートを掲載している。各方面の戦争プロパガンダや誤報を排除するために、最善を尽くすとしている。
<6月20日の戦況の評価>
東部ドンバス地方でのロシア軍の動きは、緩慢ではあるが、再び活発になっており、ドンバス地方最東端のウクライナ軍への補給を中断するだけでなく、断ち切る決断をしたようである。
今後の重要な課題は、訓練された人材の確保である。消耗戦はウクライナに有利ではない。ウクライナ側は、これまでに最大で50%の武器と装備を失ったとされているが、NATO諸国は時間をかけてそれを補うことができると主張している。
しかし、実際に代替できないのは、失われた人的資源である。一方、奇妙なことに、ある米国情報機関の幹部は、「ウクライナ人は武器を与えれば戦い続けられるというのが一般的な論調だ。しかし、ロシア人はウクライナの約4倍の人口を抱え、組織的にも人口的にも完全に崩壊寸前であると評価されている」と言っている。
NATOは、「カリーニングラード封鎖を破ろうとするロシアの脅威に対して対処する準備ができていない。しかし、カリーニングラードはロシアの核ミサイル旅団、SS-26の基地である。3月には核兵器演習が行われ、2機のSU-24が核兵器を積んでバルト海上空を飛行している。
ちなみにカリーニングラードは、リトアニアの飛び地でロシア領である。必要な物資の多くは、ロシアからリトアニア領を通過する鉄道で輸送されている。6月20日、リトアニアは鉄道の通過に厳しい規制を課した。これがカリーニングラード封鎖である。
<その他>
タス通信によると、5月に「アゾフ製鉄所」で投降した「アゾフ大隊」のスビャトスラフ・パラマール副司令官と第336海兵旅団のセルヒイ・ヴォリンスキー司令官はロシアに移送され、裁判に備えてモスクワの「レフォルトヴォ刑務所」に収監されているとのことである。
そして、捕虜となったアメリカ人傭兵の裁判も行われることになりそうだ。