新型コロナの感染が爆発的に拡大していますが、社会経済を回すことに注力し、特段の感染防止策、規制をかけずに放置してきたツケが回ってきました。医療危機を解消するため、コロナの位置づけを2類から5類へと引き下げる動きも出ています。インフルエンザ並、または「ただの風邪」としたいのなら、それを可能にする対応を取り、国民にただの風邪と思わせるだけの安心材料を提供する必要があります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年7月29日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
社会経済を回すはずが
新型コロナの感染が爆発的に拡大していますが、社会経済を回すことに注力し、特段の感染防止策、規制をかけずに放置してきたツケが回ってきました。
結果的に医療従事者や公共交通機関の関係者までもが多く感染し、必要な医療サービスが提供できず、電車の運行を制限する羽目となり、政府のコロナ対応が行き詰まりました。
この結果、発熱外来に患者が殺到し、検査も受けられずに帰される人や、コロナ以外の患者の手術が延期されたりと、医療現場では再びひっ迫が強まり、必要な患者が診てもらえない「医療危機」が発生しています。
また一部の鉄道会社は、人員がそろわないために、電車の運行便数を減らさざるを得なくなっています。
プロ野球では観客側の規制はなくなりましたが、読売巨人軍のようにチーム内で77人が感染して試合ができず、相手チームやお客さんに迷惑をかける事態となりました。オールスター・ゲームも主力選手が欠ける中で挙行されました。大相撲名古屋場所では多くの力士が途中でコロナ陽性となり、休場を余儀なくされました。また上皇様の明治神宮参拝が、職員のコロナ感染で中止されました。
変異株は感染リスクが高まったものの、重症化リスクが小さいとして、特段の感染防止策がとられずに、国民の注意、努力に期待する形になっていましたが、感染者数が爆発的に増え、濃厚接触者の隔離まで合わせると、エッセンシャル・ワーカーも含めて、大量の業務離脱者が出て、結果として社会経済が回らなくなる事態となりました。
飲食店、旅行のキャンセルも
東京で1日の感染者数が3万人を超えるころから、飲食店や旅行のキャンセルが見られるようになりました。コロナ陽性になったり、発熱などの症状が出てキャンセルを余儀なくされる人や、感染急増を見て不安になり、行動自粛からキャンセルする人も出ています。
旅館、ホテルでは比較的リーズナブルな価格帯のところで空きが増える一方、高級ホテルではキャンセルが少ないと言います。飲食店でも高級店での影響が軽微な一方、一般店で多くのキャンセルが出ていると言います。
蔓延防止等特別措置が取られずに安心していたら、客のほうからキャンセルが入り、ダメージを受ける店が増えています。