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常連客だけ値上げして搾り取る「ビッグデータ殺熟」が中国で問題化。携帯各社や楽天など「釣った魚にエサをやらぬ」商売が幅を利かす日本でも横行は時間の問題?

世界有数の「ビッグデータ強国」として知られる中国で、様々な業者がビッグデータをもとに割り出した常連客に対して、料金などを割高に設定するという「ビッグデータ殺熟」と呼ばれる行為が横行していると報じられている

報道にある実例によれば、出前アプリで料理を注文した際に会員だと配達料込みで料金は50元(約850円)だったのが、非会員のスマホから同じものを注文すると45元(約764円)と表示されたといい、利用者は「会員の方が、値段が高くなるなんて、消費者をだます手法だ」と憤っているとのこと。

同様のケースは、スマホからのホテル予約やタクシー配車アプリの利用でも認められるといい、同国ではオンライン旅行経営者がビッグデータにより不合理な価格設定をすることを禁じ、違反した場合は罰金を科す法令が定められるなど、これらの「ビッグデータ殺熟」に対する規制が順次整備されているようだが、それでも同様の手法は後を絶たないのだという。

常連客優遇とは真逆の価値観に驚きの声も

日本においても、鉄道などの指定席特急料金が通常期や繁忙期によって値段が変わったり、ホテルの宿泊料金も現地でイベントなどがあるタイミングや、盆暮れ正月といった季節要因などで高価になったりするという、いわゆる「ダイナミックプライシング」はすでに広く理解され、また定着している状況。

それに対し、ネット通販やキャッシュレス決済などのサービスが広く普及するなかで、業者側が集積した大量の個人情報をいわば「悪用」する形で、「少々ふんだくっても利用してくれるだろう」と見越した常連客に対しては、新規客よりも高い価格を設定するという、これらの「ビッグデータ殺熟」は、いわゆる先述のダイナミックプライシングとは全く性格が異なるもの。

現地中国でも「お得意様がバカを見る」との批判の声が大いに渦巻いており、上記のように「ビッグデータ殺熟」の被害に遭ったケースが、SNS上などで告発される事態が続出しているということだ。

いっぽうで日本においては、企業や店に愛着を持って商品やサービスを継続的に購入・利用してくれる、いわゆる「ロイヤルカスタマー」を殊更重視する傾向があり、またそんなマーケティングなどとは無縁そうなお店でも、勝手知ったる常連さんにはおまけや値引きをすることは昔から行われていたこと。

ゆえに、そういったものとは真逆の価値観だと言えそうな「ビッグデータ殺熟」に対しては、「驚いた」「これで長期的な商売をやっていけるの?」といった、懐疑的な声が比較的多くあがっている状況だ。

「ビッグデータ殺熟」は日本にも波及する?

このように、日本国内でも大いに取沙汰されるに至っている「ビッグデータ殺熟」の問題だが、いっぽうでは「常連客への優遇が当然という考えこそ改めたほうがいい」といった趣旨の意見も。確かに、新規の客よりも常連客から搾り取ることを考えたほうが、商売的には効率的だというのは一理ある話で、今後は日本国内でもそういった商売をするところが出てくるのでは、と予測する声も少なくない。

またビックデータ悪用の是非はおいとき、常連客からより搾り取ろうとする「ビッグデータ殺熟」的な考え方は、すでに日本でも浸透しているのではといった見方も。要は「釣った魚にはエサをやらない」といった商いをしているところも、今や結構あるのではというのだ。

その代表的なものとしてあがってるのが、新規契約や他社からの乗り換え(MNP)客には手厚いいっぽう、長期継続特典が各社で相次いで廃止されるなど、長期利用者が冷遇される傾向にある携帯電話業界。また、ここ数年は定期的に「改悪」といった報道が取沙汰される楽天関連のサービスなども、まさに「釣った魚にはエサをやらない」の典型例との批判は、以前から多い。

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さらに、過去には独自の「肉マイレージ」の導入など、リピーターに対して手厚いサービスを行っていたものの、そのシステムを改悪するや否や、それまで贔屓にしていた常連客の大量離反を招いてしまったのが、言わずと知れた「いきなり!ステーキ」。つい先日には、創業社長が業績不振の責任を取り辞任したと報じられたように、その影響はいまだに続いているといった状況だ。

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常連への過度な優遇にも不平の声が一部からあがるものの、「常連客軽視」「釣った魚にはエサをやらない」といった行為に対しては、それ以上の批判の声が多くあがりやすい日本で、果たして今回取沙汰されている「ビッグデータ殺熟」的なものが横行する日が訪れるのかどうか、今後の動向に注目している向きは結構多いようだ。

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