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松屋、みそ汁無料終了の“撤回”に寄せられる称賛と懐疑の視線。「値上げしない」より「賃上げする」が美談になって欲しいとの切実な声も

大手牛丼チェーンの松屋が一部店舗で実施していた「みそ汁無料サービスの終了」を、今月11日に止めたと報じられている。

「みそ汁無料サービスの終了」を行っていたのは北海道の11店舗で、今年8月23日に突如発表され、即日実施。原材料価格と物流費の高騰を受けての同施策だったが、利用者からの復活を求める要望は大きかったようで、わずか1か月半ほどで元に戻ることとなった。

今回のみそ汁無料の復活を受けて、とある松屋関係者のツイッターは「コストばかり気にして、危うく『みんなの食卓でありたい』という想いをなくしてしまうところだった」「みなさまからの声で、本当に大事なことに気づかせてもらった。心より御礼申し上げる」とコメントしている。

みそ汁無料終了で客離れ?……との推測も

歴史的な円安や原材料価格高騰のあおりを受けて、低価格を売りにしていた外食チェーンの間でも値上げが相次いでいる昨今。

そんななか、松屋の北海道内の一部店舗で試験的に実施されていた「みそ汁無料サービスの終了」だが、具体的には牛めしなどの単品メニューのみを対象に、それまでは無料で提供していたみそ汁を60円で提供するというもの。

各社間でだいたい同じような価格を維持している牛丼だが、松屋はみそ汁が無料で付く分だけお得だといった評価もすっかり定着していた最中での“実質値上げ”だっただけに、「これが全国的に導入されたら……」という危惧も広がるなど、大きな反応を呼んだのも記憶に新しい。

そんな「みそ汁無料サービスの終了」が今回わずかな期間で覆されたことに関して、SNS上では「さすが我らが松屋さん!」といった称賛の声も多くあがっているのだが、その反面で、結局のところみそ汁有料化によるプラス以上に、それによる客離れのマイナスのほうが大きかったからでは……といった推測もチラホラとあがっているところ。

松屋の牛めしといえば、今年9月にタレが“32代目”のものに変わり、またみそ汁のほうも昨年にリニューアルされるなど、クオリティの向上には余念がなく、その味わいはライバルチェーンにまったく引けを取らないのは言うまでもない話。だが、それ以上に“みそ汁付きでのコスパの良さ”に重きを置いている利用者が相当多いことに、今回の件で改めて気づかされたといったところだろうか。

「値上げせず」のスタンスに寄せられる賛否両論

みそ汁の有料化に関してはギリギリ踏みとどまった松屋。しかしそのいっぽうで今月11日には、「ネギたっぷり旨辛ネギたま牛めし」など複数商品の値上げを実施。730円だった「オリジナルハンバーグカレー」の新価格は830円にアップするなど、各商品10~100円の値上げとなっている。

このように、もはや多少の値上げは不可避といった空気が支配する外食業界だが、そんななかイタリアンファミリーレストランチェーンのサイゼリヤは、今月12日にあった記者会見で社長が「値上げしません」と宣言

サイゼリヤの場合、海外店舗が約500店まで増えており、それらは円安によって逆に増益効果が見込めるということで、価格の据え置きを決めた模様。この決断に対して、利用者からは手放しに喜ぶ声も多く聞かれたものの、企業が値上げしないことを称える風潮というのも如何なものか……といった声もあがるなど、様々な反応が飛び交った。

モノの価格が上昇し、企業の利益が増加すれば、従業員の給料が増加して購買力が上がり、消費がより活発になっていくという、いわゆる“良いインフレ”の流れに持っていくためには、企業の値上げを容認すべし……長らく続いたデフレ期への反省も込めた、こういった意見も大いに幅を利かせている昨今。

だが、そのいっぽうで「20年上がらない日本の給料」といった状況が散々指摘されるなかで、企業が潤ったところで果たしてそれが従業員の給料に反映されるのか……といった疑心暗鬼な見方も根深いといった状況だ。

サイゼリヤの「値上げしません」宣言に対しては、「“値上げするけど、それで賃上げします”のほうが称賛されるのに……」といった声もあがっているのだが、実際そういったことを公言する企業がほとんど現れないところも、いわゆる“良いインフレ”論に対する懐疑的な視線に繋がっているともいえそうである。

Next: 「賃上げして値上げしたほうが良いと思うのは私だけか?」

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