岸田首相は5日夜、鈴木財務相・浜田防衛相と会談し、23年度から5年間の防衛費について約43兆円を確保するよう指示しました。なぜ何事も決断できない首相が防衛費に限ってはさくっと決めるのか。とにかく米国を喜ばせたいという狙いは明白で、気になるのは購入兵器からいつの間にか防御から攻撃にシフトしていることが垣間見えることです。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2022年12月03日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
決断できない首相がなぜ防衛費だけさっさと増額?
首相就任以来、なんでも検討すると言いながら即断ができず、問題が発覚して更迭する閣僚の大臣も散々時間をかけてようやくクビにするなど、その判断能力についてはまったく精細を欠く存在の岸田首相。
統一教会と関連のある自民党議員を役職や閣僚から外すことも満足にできず、とうとう国民の凄まじい不満を抱えたまま年末を迎えようとしており、支持率は日々下がる一方の状況です。
ただ、国民が誰も期待していない防衛予算の増額には異常なほど積極的。安倍元首相の国葬実施に次いで、ろくな説明責任も果たさぬまま、またしても暴走しそうなところにさしかかっています。
防衛費「GDP2%」達成は米国のいいなりの状況
そもそも本邦の防衛費が昔はGNPに対して1%、そして足もとでもGDP1%の枠に収められてきていますが、これは1976年に自民党三木内閣が防衛費の膨張や周辺諸国の反発を避けるために閣議決定して以来、常に守られてきたもの。
前例をなんでも平気でぶち壊してきたあの安倍元首相でさえも、この枠組を簡単に乗り越えることはしなかったものでした。
実際にこの枠を守ることと、押付けとはいえ戦後の平和憲法を維持することで、ここ75年以上は無闇に世界の地域紛争や戦争に巻き込まれずに済んで来たことは厳然たる事実です。
しかし岸田氏は米国からGDP2%への増額を強要されると、それをあっさりと了承。国民の意向であるかのように見せかけながら、独自の判断だけで簡単に改悪しようとしていることが見受けられます。
たしかにウクライナ戦争の危機でロシアとの対決に直面するNATOの国防関係支出の算定基準では、加盟国は対GDP比で少なくとも2%の水準まで引き上げることを目標を掲げるようになってきています。
その流れに加え、なぜか財務省の強い後押しもあって岸田首相は国民からの支持が得られないにも関らず、俄然この件に関しては米国に従って2%水準の達成を目指し、国際的にも貢献しているかのようにふるまい始めています。
ところが、そもそも我が国はNATOの加盟国ではありません。そんな数字のギミックを打ち出すことは、何の意味もない状況です。