北海道西興部村の障害者支援施設で、入所者13人に対して職員6人による計38件の虐待があったと報じられ、怒りの声が殺到する事態となっている。
報道によれば今年5~6月にかけて、30~40代の男性職員6人が20~70代の男性入所者に対し、全裸で放置させたほか、動かしにくい体を無理に動かしたり、首を後からつかんで押さえ付けたりなどの虐待が行われていたとのこと。施設によると、入所者にケガはないという。
道と村に今年6月に通報があり、発覚したという虐待の事実。施設は今月4日になって、入所者の家族らへの説明会を行い、虐待の事実を報告。6人の職員は現在も勤務しているといい、今後処分を決定するという
コロナ対応も職場環境のさらなる悪化に繋がった?
最近では、静岡県裾野市の保育園で園児を宙づりにしたなどの容疑で、3人の保育士が逮捕されたほか、富山市の認定こども園でも園児の体を引っ張るなどの暴力が認められるなど、乳幼児への虐待事件が相次いで発覚。
いっぽう今回は障害者施設ということで、被害者の年齢も20~70代と様々といったところだが、先述の乳幼児と同様に理不尽な仕打ちを受けていたとしても、そのことを周りの他の者に伝えることが難しいといった人々をターゲットとしているだけに、それらの行為を行った職員の卑劣さに、SNS上などでは憤る声が殺到している状況だ。
いっぽうで、保育園や障害者施設などでこの手の出来事が多発するのは、ひとえに待遇の悪さゆえではないか……といった声も多くあがっているところ。
元々ちゃんとしてた保育士が待遇の悪さから虐待に走ったわけではなく、待遇が悪すぎて粗悪な人材しか集まらないんだろうなと思っている。どんなに待遇が悪くても、普通は子供を虐待しない。どちらにせよ保育士の待遇を改善することでこういう事件も減ってくるように思う。
— 砂糖中毒 (@IlgE6i) December 5, 2022
障がいがある方に優しくできない人は
誰に対しても優しくできないのではないかな介護士の給料待遇を良くしないと、まともな人が来なくて質が悪い人が来てしまうのでは。
それに、生活がきつかったり忙しいとかで余裕がなくなって心が狭くなると性格が変わってしまう人もいるからね。#障害者施設 https://t.co/JRsrV3Rz0T
— 北澤セイラ@旭川市 (@seirawhite_) December 6, 2022
先の保育園の事件もそうだけど、人員不足なのに労働に見合う待遇が低い(どう考えても負担が大きい)あまり、本来なっちゃいけない人が職員になっているのも原因か。まともにやってる人が報われないのは避けたい。 / “障害者施設で13人虐待 男性職員6人、全裸放置など 北…” https://t.co/TBXoTivw75
— nakakzs (@nakakzs) December 6, 2022
いずれも他職種と比べても賃金が低いということにくわえ、責任が重いうえに業務量も膨大で、さらに休みが取りにくく希望する時間に働くというのが難しいと取沙汰されてきた、これらの業界。
いっぽうで、裾野市の保育園に勤めていた容疑者のひとりは「新型コロナの影響で、業務量や気遣うことが増えてストレスを感じていた」と、接見した弁護士に話していたとのこと。ストレスが増えたからといって虐待が正当化されることは決してないのだが、そういった要因も、さらなる職場環境の悪化に影響しているという状況もあるようなのだ。
そういった問題もあって、例えば保育士の場合だと学校などで資格を取って卒業する際に、その約半数が保育所への就職をしていないというデータも。これは保育はもとより介護などの業界に関してもいえるようで、有資格者自体はそれなりに存在するものの、それらの多くがその仕事を忌避しているのが現状だというのだ。
しかし、そんな状況下でも各施設は人員を確保しなければならないわけで、その過程で今回のような虐待などの不祥事を起こす意識や程度の低い者らが、至るところで紛れ込む格好となり、その影響がここに来て各地で顕在化している……といった見方も、昨今の一連の虐待事例に関しては言えそうである。
介護人材の海外からの受け入れは円安で…
とはいえ、このような待遇の悪さゆえに慢性化している、保育や介護といった業界の人材不足の問題に対し、国や地方自治体などはほとんどまともに向き合っていないというのが正直なところ。
特に老人介護の分野に関しては、従事する人々の待遇改善よりも技能実習制度等を活用しての外国人労働者の受け入れ、まさに「人手が足りなきゃ、よそから補充すれば良いだろ」といった単純な考えで乗り切ろうとしているフシが、透けて見えるのだ。
しかしながらそんな思惑も、昨今の急激な円安で脆くも崩れつつあるというのが実際のところ。東南アジアなどの海外通貨に対する日本円の価値は下落するうえに、日本国内では賃金がほとんど上がらず、自国との賃金格差は急速に縮小。介護技術が高いという日本ならではの優位点はあるものの、逆にそれ以外の要素は悪化の一途で、もはや渡航先としての日本の競争力は失墜しており、そんな状況下で海外からの介護人材の確保がうまくいくかといえば、大いに疑問符がつくところだ。
日本国内で高齢者の数がどんどん増えていくなかで、このような介護などの人手不足の問題は解消されなければ、そのサービスの全体的な質がさらに下がるのは必至。保育や介護といった業界の待遇改善を放置したことの“ツケ”ともいえそうな、昨今の虐待事件の多発だが、それによる本当のしっぺ返しを今後国民すべからくが被ることになるのは、避けられないといったところのようだ。
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