世界の不動産市場の動向は?
俣野:実物資産の代表といえば、不動産と金ですが、状況はいかがでしょうか。
織田:不動産と一口に言っても、実際は場所や広さ、建物の築年数やメンテナンス状況などによっても、価格はかなり違ってきます。
アメリカのケースシーラー住宅価格指数という、代表的な不動産指数があります。見てみると、過去10年間で数値が倍になっています。年換算に直すと、おおよそ7%から8%の上昇率です。
ヨーロッパは、国によって状況が違いますので、私が現在、本拠としているイギリスを例に挙げましょう。
イギリスの住宅価格指数は、2013年の初旬から2023年の初旬で見た場合、この10年で約175%の上昇となっています。特にコロナ禍では急激な伸びを示しており、直近の2年は10%超のペースで上がっています。
これはコロナが発生した際、各国が行った金融緩和政策によって、余った資金の多くが金融市場に流れたことや、インフレによる資産価値の上昇等も影響しています。
イギリスでは、2022年にはインフレ率が10%を超え、現在も下がっていません。一方、不動産も10%超の上昇となっていることから、「不動産を所有している人は、資産保全がされている状態」と言っていいかと思います。
日本に関しても、この10年で130%ほど伸びてはいますが、やはり欧米に比べると、伸び率は少ないのが現状です。
日本の不動産市場の特徴として、キャッシュバイヤーが非常に少ないことが挙げられます。契約のほとんどがローン購入に偏っているため、今後、日銀の政策変更による利上げなどが起きた場合、一気に市場が崩れる可能性は否めません。
俣野:今後の日銀の動向には注意が必要、ということですね。
最高値を更新する“金”は買いか?
俣野:金は現在、最高値を更新している状態ですが、「どこで買うのがいい」とかありますでしょうか。
織田:今は、どこで購入しても価格に大差はありません。
金の現物取引はイギリスのLoco London marketが、先物取引はアメリカのCMEグループに属するComexが2大市場となっており、ここで取引された価格をもとに、世界の市場価格が決められています。
ですからアメリカで買おうと、日本で買おうと、価格はだいたい同じです。
俣野:以前は、金の裁定取引で稼いだ話を時々聞きましたが、今はもうない、と。
織田:確かに、数年前は各国の金の価格差に目をつけた人たちが、価格が高い国で金を売り、安い国で金を買い戻して差益を得る、という方法を行っていました。これを、アービトラージ(裁定取引)と言います。
しかし現在は、AIが24時間市場を管理していますので、アービトラージが発生すると、AIが瞬時にそれを察知し、差益を打ち消すような逆取引を行いますので、かつてのような利益を上げることは難しくなっています。