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表参道のタワマン都営住宅、築浅・2DKが6万2000円で応募殺到。“昭島レベル”低家賃での都心生活に集まる羨望と「実際、生活できるの?」という怨嗟の視線

東京・表参道にある都営住宅が「家賃6万2,000円」で入居でき、応募殺到が殺到したという報道大いに波紋を呼んでいるようだ。

渦中の物件は築3年の「都営北青山三丁目アパート」にある2DK(広さ42平方メートル)の一室で、募集したところ、16件の応募があったという。

これは、東京都が結婚予定のカップルや子育て世代向けに、4月から拡充した都営住宅などへの入居優遇制度によって募集されたもので、他の都内にある人気物件にも応募が殺到しているとのことだが、そんな需要に対して供給戸数はかなり少ない状況のようだ。

相場的には民間の約3分の1

今回取沙汰されている「都営北青山三丁目アパート」だが、もとは昭和30年代前半から整備されはじめた古い団地群があったところで、一流ブランドのショップなどが立ち並ぶセレブな表参道の街にあって、一種独特な雰囲気を醸し出していたのだが、老朽化などもあって再開発の対象に。

そこで新たに建った「都営北青山三丁目アパート」だが、地上20階建て・総戸数302戸で保育園や児童館も併設しているという、“アパート”とは名ばかりのまさに豪華タワマンといった施設。団地時代から引き続き住む入居者もいるいっぽうで、ぽつぽつと空いた部屋がこうやって募集にかかるようだ。

それにしても、そんな好立地のしかも2DKという物件が家賃6万2,000円で借りられるというのは、驚きしかないといったところ。

ちなみに某賃貸サイトにおいて、周辺地域の間取り2K/2DKのマンションの家賃相場をみてみたところ、港区で19.2万円、渋谷区は16.8万円ということなので、おおよそ相場の3分の1。しかも築浅ということを考えれば、相当の破格値と言えそうである。

いっぽうで、普通に東京都内で2DKの家族向け物件を借りようとすると、家賃相場6万2,000円前後では23区内はやっぱり無理なようで、都下も都下といった昭島市(6.3万円)や羽村市(6.0万円)あたりが、その相場となるようである。

激安家賃なのに応募者が意外に少なかった理由

このように、表参道のApple Storeもスープの冷めない距離にあるという超都心の物件が、いわば“昭島水準”の低家賃で借りれるということで、人気になるというのも頷けるのだが、ただ今回の場合、この物件への応募数は16件だったということ。

もっと人気になってもいいのでは……とも思うところなのだが、そこは先述の通り“結婚予定のカップルや子育て世代向け”ということで、パートナーシップ宣誓制度の利用予定の同性カップルも含めた、婚姻届を提出する予定の夫婦、さらにともに40歳未満など諸々の入居条件があったとのこと。

さらに、そもそも住まいに困っている人のための公営住宅ということもあり、所得基準は厳格に定められており、例えば家族人員2人だと、世帯の所得金額(年間の収入から必要経費を差し引いたもの)は227万6,000円までで、それ以上だと審査の段階で除外されるという。年金生活をしているのならともかく、都内で普通に働いているのなら、その水準以下になるというのは逆に難しそうである。

しかも、それぐらいの低い収入の世帯が実際に入居したとして、果たして表参道のあの界隈で生活していけるのかという心配も、SNS上などでは少なからずあがっているところ。

例えばスーパーマーケットに関していえば、確かに近所にはイオンが運営する都市型小型スーパー「ヴィル マルシェ」、あるいは外苑前方面に行くと高級スーパーの「成城石井」があるなど、その世帯収入だと毎日利用するのは厳しそうな店ばかり。よって、表参道からちょっと離れた千駄ヶ谷にある、格安スーパーの「オーケー」が、日々の生活の命綱になりそうな状況である。

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とはいえ抽選にさえ当たれば、信じられないような家賃で都心の一等地に住めるということで、今後も注目を集めそうな都営住宅。ただ、幸運にも入居できたという人以上に、抽選に外れて悔しい思いを抱く人間のほうが当然ながら多いわけで、そういった層からの羨望と怨嗟の視線も多いというのも事実のよう。

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実際、そういった“不公平感”を抱く層を当て込んでのことか、過去には都議会の一部会派から「都営住宅廃止」というマニュフェストが浮上したことも。住居に困っている人々に手を差し伸べる公営住宅の存在は、非常に有意義なものであることは間違いないのだが、その救いの手がごく一部にしか伸びない状況であれば、その在り方を問う声があがるのも無理のないところだろう。

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