岸田内閣の支持率急落は、長男の秘書官更迭が遅れた「親の甘さ」が露呈したことだけでなく、マイナンバーカードをめぐるトラブルも大きく国の信用を落としました。それでもマイナ化を急ぐ政府にはどんな狙いがあるのでしょうか。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年6月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
岸田内閣の支持率急落
岸田内閣の支持率急落は、長男の秘書官更迭が遅れた「親の甘さ」が露呈したことだけでなく、マイナンバーカードをめぐるトラブルも大きく国の信用を落としました。
特に国民の健康に深くかかわる健康保険証を廃止してマイナ保険証に強制シフトするやり方に多くの批判が集まっています。
政府は国会会期末の21日に急遽マイナ「総点検本部」を立ち上げる事態に追い込まれました。準備不十分のまま、拙速でこのマイナンバーカードの義務化を進めた失政が、自民党政治を象徴している面があります。
国民が消極的なワケ
今回の内閣支持率低下には、政府のマイナンバーカードの義務化、健康保険証との一体化、紙の保険証廃止への反発も影響しています。
共同通信の世論調査では、現在の保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化する政府の案に対して「延期ないし廃止すべき」とする人が72.1%に達しました。
もともと国民の間でマイナンバーカードは不評で、しばらく普及率は20%の壁に阻まれていました。政府が長年キャンペーンを続けながらも、マイナカードの申請は20%どまりでした。そもそもマイナンバーは政府が国民の個人情報を把握するのに便利であっても、国民には何もメリットがありません。
しかも、政府が個人情報の規制を強化し、情報漏洩が問題視されるなかで、あえて個人情報の塊であるマイナンバーカードをつくり、持ち歩くことのリスクも無視できないものでした。国民の間にはICチップで国民総背番号制で個人情報を把握する政府への不信感もありました。
そればかりか、個人情報や各種名簿が不正に流出し、詐欺メールや詐欺電話などの被害も増えています。マイナンバー情報が洩れれば、さらにこうした詐欺被害が増えるリスクがあります。
政府はデジタル化を進めるには熱心ですが、セキュリティの整備が進まず、国民の不安を募らせるばかりです。