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人材紹介業者「転職決まればお祝い金」に規制のメス。紹介手数料を繰り返し得る“錬金術”に批判殺到も「お祝い金になびく程の低賃金が諸悪の根源」との声も

介護・医療・保育分野における人材紹介業者が、働き手に対し「お祝い金」などを出して転職を促すという違反行為が横行しているとし、厚生労働省が実態調査に乗り出す事態になっているようだ。

報道によれば、人材紹介業者が施設に紹介してわずか数か月といった働き手に対し、「職場に満足していないなら転職してはどうか。成功したらお祝い金を数万円出す」などと持ちかけ、別の施設を紹介するといったケースもあったとのこと。

お祝い金を出して転職を促すことは、2021年4月に職業安定法に基づく指針で禁止されたのだが、厚労省が同年度に人材紹介業の約4,300事業所に定期的な調査を行ったところ、お祝い金に関する違反が8件見つかったという。罰則がないことも横行に繋がっているといい、各施設では職員がすぐに仕事を辞めてしまうことも多いという。

2年間は転職の勧奨を行うべからず、厚労省が呼びかけるも…

入社の祝い金といえば、工場などに派遣で入社したり、夜の接客業に入店した女の子がもらえたりするものを思い浮かべる向きもいるかもしれないが、今回取沙汰されているのは、そういった企業やお店、派遣会社などが出す祝い金ではなく、あくまで“人材紹介業者”が出す就職お祝い金のこと。

人材紹介業者は、働き手を各施設に紹介すれば、その施設から紹介手数料を得ることができるが、期間を置かずその働き手に対し“お祝い金”をチラつかせ、別の施設へと転職させることに成功すれば、その別の施設からも再び紹介手数料が得ることができる、というのだ。

ちなみに人材紹介業者に入る紹介手数料だが、働き手の年収の3割程度が相場だということ。それが数万円のお祝い金程度の出費で入って来るというのなら、人材紹介業者が躍起となって働き手に転職を促すのも無理もないといったところだろう。

昨今では、働き手が企業間を移動することが産業の発展を促し、雇用市場の活性化に繋がるという、いわゆる“人材の流動化”が大いに持て囃されているが、とはいえ今回のように、時には数か月といった短い期間で働き手が出入りするという状況というのは、労働市場における需給調整機能を歪めかねず、逆に労働者の雇用安定を阻害するのではないかという懸念も。

このような働き手のあまりにも早い離職を防ぐため、厚労省は人材紹介業者に対し、自らが紹介した働き手に関しては就職した日から2年間は転職の勧奨を行ってはいけない、あるいは介手数料に関して“返戻金制度”を設けることが望ましい、などのことを遵守するよう呼びかけているという。

だが先述の通り、これらの件に関しては罰則が存在しないため、利益最優先な一部人材紹介業者の間では、まったく顧みられていないというのが現実のようなのだ。

悪徳人材紹介業者の進出を許した「ハローワークの形骸化」

人材紹介業者に関しては、今回取沙汰されている介護・医療・保育分野などは特に人材不足が顕著ということもあり、そんな事業者の足元見るが如く、高額の紹介料を設定する業者も存在するとの指摘も。

そういうこともあり人材紹介業者に対しては、お祝い金の禁止以上の厳しい規制を求める声も少なくはないのだが、いっぽうでハローワークがきちんと機能していさえすれば、こういった悪徳な人材紹介業者が介入する余地はないのでは……といった声も多く聞こえるところ。

またそのいっぽうで、各施設側がまともな給与を払っていないから、働き手はわずか数万円程度のお祝い金で転職を決めてしまうのでは……といった見方も。確かに医療分野はともかくとして、介護や保育といった分野は、その安すぎる賃金が人材不足を招き、ひいてはスタッフの品質低下による施設の“崩壊”まで招いていると、度々指摘されているところだ。

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今回取沙汰されているお祝い金の存在に関しては、内閣府の規制改革推進会議でも問題視されているとあって、今後厚労省は年度内に紹介業者と施設側の両方から実態を聞き取り、24年度の規制強化を検討しているとのこと。ただ悪徳な人材紹介業者への規制は当然なことながら、それ以前に介護・医療・保育分野などの働き手の収入がアップする施策を政府が行なわない限り、根本的解決は遠いのでは……というのが多くの見方のようだ。

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