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富裕層がさらに肥える「ふるさと納税」の功罪。制度に4つの問題点も、見直しは官僚が“干された”事例で絶望的か=原彰宏

ふるさと納税に「物申す」役人もいたが…

しかし、かつて「ふるさと納税制度」にものを言った役人がいました。平嶋彰英・元総務官僚です。

平嶋氏は「高額所得者による返礼品目当てのふるさと納税は問題です。法令上の規制を導入すべきです」と菅官房長官(当時)に進言、これに対し菅官房長官は受け入れず、ふるさと納税の寄附控除の上限倍増とワンストップ特例の導入を指示したという経緯があります。

ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる便利な仕組みです。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入して、寄付した自治体に送るだけなので、とってもかんたん!寄付金上限額内で寄付したうち2,000円を差し引いた金額が住民税から全額控除してもらえます。

※参考:簡単便利!ワンストップ特例制度とは? – ふるさとチョイス

菅前総理に歯向かった平嶋氏には、自治大学校長就任という異例の人事が下りました。総務省から追い出されたのです。あからさまな左遷人事です。

※参考:菅氏と闘った元官僚の激白「抵抗したら干される恐怖」- 朝日新聞デジタル(2020年9月11日配信)

返礼品をめぐって国と揉める自治体も

ふるさと納税を巡っては、こんなこともありましたね。

アマゾンギフト券などの返礼品で寄付者を集めた大阪府泉佐野市が制度の対象外となり、同市が国に裁判を起こし、最高裁では、高裁の判断を覆して泉佐野市が勝訴したというものです。

そりゃ、返礼品は法律で禁止されていないのですからね。むしろ、高裁で総務省が勝ったことの方が不思議でした。

「ふるさと納税は、税制度に対する国民の不信感を高めることになる」……前述の平嶋彰英氏は、雑誌に実名告発しています。

※参考:(1ページ目)菅官房長官に意見して“左遷”された元総務官僚が実名告発「役人を押さえつけることがリーダーシップと思っている」 – AERA dot.(2020年9月10日配信)

「ふるさと納税」に4つの問題点

ここまで言われている「ふるさと納税」制度の問題点を整理しておきます。

1. 寄附という名目でありながら、実質的には節税手段として機能し、特に高所得層がその恩恵を得る仕組みとなっている

2. 実質的な意味で農水産業やそれに関連する産業の割合の多い自治体への補助金のような役割を果たしている

3. 「ふるさと納税」だけで見た各自治体の採算実績から、赤字自治体1団体あたりで4つの黒字自治体の黒字を支えているという構図になっている

4. 地方交付税交付金の観点から、返礼率を少しでも高めて流入額を増やそうというインセンティブを各自治体に与えた

ざっとこんな感じでしょうか。

(1)に関しては、ここまで何度も指摘してきました。

(2)に関しては、返礼品は原則地場産品で、雑貨や工芸品よりも生鮮食品などの人気が高く、結果として、農水産業が盛んな地域がふるさと納税の恩恵を受けているのではとの指摘です。

(4)に関しては、地方自治体環境層を促すことにもなり、「ふるさと納税」に対して積極的であるかどうかで変わってきます。地方が独自の「徴税権」を手に入れたと考えると、それはそれですごいことですけどね。

さて(3)に関しては、「ふるさと納税」だけを見ると、ざっくり全国の8割の自治体は黒字になっているそうです。黒字は主に地方の自治体が多く、赤字になっている自治体は都市部が多いとの結果です。

Next: 都市から地方へ流れる税金……大きな人口を抱えきれるのか?

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