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富裕層がさらに肥える「ふるさと納税」の功罪。制度に4つの問題点も、見直しは官僚が“干された”事例で絶望的か=原彰宏

都市から地方へ流れる税金

都市から地方への資金移動が進み、地方創生が促進されるという見方もできますが、一方でこんな記事もあります。

※参考:ふるさと納税9654億円、3年連続で最高 寄付先最多は都城市 物価高、返礼品でやりくりも – 東京新聞 TOKYO Web(2023年8月1日配信)

東京新聞記事ですが、「総務省は1日、ふるさと納税制度に基づく自治体への2022年度の寄付総額が、前年度比1352億円増の9654億円となり、3年連続で過去最高を更新したと発表した」とあります。

また、「半面、都市部を中心に税収の「流出」が顕著で、東京23区では過去最高になり、東京や神奈川県などの自治体からは制度の見直しを求める声があらためてあがった」とあります。

制度が始まった2008年度の寄付総額は81億円だったそうですよ。今とは桁が違いますね。

返礼品として人気の特産品を確保できる自治体が上位になる傾向は変わらず、2022年度に最も寄付を集めたのは宮崎県都城市で196億円。北海道紋別市194億円、根室市176億円と続いたとあります。

先程の「農水産業への補助金の役割」という指摘も、なんとなくうなずけますね。

一方、首都圏の自治体は税収の「流出」があらためて目立ったとあります。

記事では、「東京23区の流出見込み額は合計で826億6,000万円(6月1日時点の推計値)に上り、前年度比で1.2倍近くに達し過去最高になった」とあります。

「23区で最も多かったのは、世田谷区の98億2300万円で全国でも5番目。全国11番目の港区(67億6100万円)や大田区(49億5100万円)、杉並区(47億8600万円)など、上位20自治体までに8区が入った」とあります。

さらには「都内のほか、首都圏自治体は横浜市が流出額全国トップの272億4200万円、川崎市が4番目の121億1500万円。6番目にさいたま市の89億6100万円、12番目に千葉市の55億4100万円と続いた」とのことです。

ここまでを見れば、先程述べた通り、大都市から地方へお金が動く仕組みはできているということになります。地方創生という観点から、地方活性化の手助けになっているのかもしれません。

ふるさと納税を寄付した人は翌年度に居住地に納める住民税が軽減(住民税控除)されるため、居住自治体にとってはその分「減収」となります。

ふるさと納税制度によって控除額超過となった市町村は、地方交付税により当該超過額の75%が補填され得る仕組みとなっていますが、地方交付税の不交付団体である東京の都区部についてはその対象となっておらず、超過分の補填がなされないため、純粋な「減収」となっています。

川崎市も2022年度は不交付団体となっており、収入減となるふるさと納税制度への懸念は特に強いようです。
※参考:東京都23区の区民税流出は826億円超 ふるさと納税で過去最多:東京新聞 TOKYO Web(2023年8月1日配信)

あらためて、ふるさと納税制度に基づく東京都23区の区民税の控除額(流出額)が合わせて826億6,000万円(6月1日時点の推計値)と過去最多を更新したことにもう一度触れておいて、中野区のホームページを見てください。

「その『ふるさと納税』、もう少し考えてみませんか?」というもので、返礼品目当てで、中野区に本来収められる住民税が激減したことを指摘しています。

そのうえで「中野区では、子育て先進区の実現に向けた取組をはじめとした事業への寄附を、ふるさと納税制度などを活用して受け付けています。しかしながら、中野区への寄附額は7,721万円(令和3年度)と、圧倒的に流出額の方が大きいのが現状です。この状況が続けば、区民に提供する行政サービスの低下につながりかねず、大変深刻な問題として捉えています。そのため、中野区は、ふるさと納税制度の抜本的な見直しを国に求めています」……このように訴えていますね。

「ふるさと納税」制度、これを見直すと言っただけで菅義偉氏にきつく怒られるのかもしれませんが、その制度の主旨や現状を鑑みて、今後どうあるべきか、どう改善すべきかということは、立ち止まって考えてみても良いのではないでしょうか。

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らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』(2023年8月7日号)より
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