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なぜ「ダイキン」過去最高益も株価20%下落?直面している3つのリスク。長期投資家はどう判断すべきか=佐々木悠

<米国では需要増の反動と金利高の影響を受けている>

しかし、アメリカの個人住宅需要の停滞や流通在庫の調整などによって住宅用ユニタリーなどが販売台数ベースで前年同期比で大きく下落しています。

ダイキン工業 2024年3月期1Q 決算説明資料 より作成

ダイキン工業 2024年3月期1Q 決算説明資料 より作成

前年比で下落している住宅用ユニタリーとRA/SKYは共に個人向けの空調装置です。従って、目先個人向けのエアコン需要が急激に減少しています。

期別 前年比同期比 販売数増減率(米州)

各年度 決算説明資料より作成

各年度 決算説明資料より作成

さらに、ダイキン工業と各社のアナリストの質疑応答スクリプトを読むと、ダイキンの目先の販売動向は厳しいものであることがわかります。

アメリカの販売台数減について、以下のように説明されています。

個人消費において、巣篭もり需要の反動が起きている。モノの消費、住宅をはじめ、耐久消費財、白物のエアコンも含めた家電商品などの需要が減退した影響が出ている。

今後は需要がどこまで戻っていくのか、不透明感が高いという認識をしている。エアコンは耐久消費財として住宅市場と連動することから、住宅ローン金利の高止まりも悪影響である。

アメリカの住宅着工件数の推移を見てみましょう。

住宅着工件数とは特定の月に建設が始まった新規建物の増減を示す指標であり、ダイキンにとっては、先行指標になるものと考えられます。

家が増えればエアコンが増える、逆も然り、ということですね。

出典:Investing.com

出典:Investing.com

特に2022年から現在にかけて、緩やかに右肩下がりになっているように見えます。

これを見ると、ダイキンが「家電商品の需要が減退し、どこまで戻るのかわからない」と言っていることに頷けます。

<欧州ではガスの価格下落で自社製品が代替される>

また、欧州のヒートポンプ式温水暖房機器も販売台数を落としました。

ヒートポンプ式温水暖房機とは、大気の熱エネルギーを利用して部屋を暖かくする暖房機器であり、エアコンの待機中の熱を交換する、という基礎技術を活用した商品です。

欧州では化石燃料を燃やす暖房が主流です。

一方で、ヒートポンプ式温水暖房機器は省エネ性能の高い暖房であり、環境意識の高い欧州マーケットにおいてガスや石油を燃やす暖房からの置き換えが進んでいるのです。

しかし、ここまで好調だったヒートポンプの売上が大きく落ち込みました。

期別 前年比同期比 販売数増減率(欧州)

出典:各年度 決算説明資料より作成

出典:各年度 決算説明資料より作成

主な理由は2つ。

1つは、イタリアやフランスなどで補助金が終了したこと。2つめに、天然ガスの大幅な価格下落です。ロシア・ウクライナ情勢の影響で天然ガスの価格が急騰しましたが、現在はピークから5分の1前後になったことです。

つまり、自社の暖房がガスを使った暖房に代替された、と考えることができます。それに加えて、補助金も終了したことから、自社の商品の購買意欲が低下したと考えられます。

しかし、ダイキンはこの欧州の販売台数減は一過性のものである、と捉えています。2Q・3Qも注目していきたいポイントです。

ここまでをまとめます。株価が下落している理由は

  1. 米国で個人向けエアコンの販売が落ち込んでいること
  2. 欧州でヒートポンプ暖房の販売が落ち込んでいること

両市場がここまで好調であったが故に株価が反応した、と考えられます。

Next: まだあるダイキン工業に投資するリスク。長期投資家はどう判断?

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