巷ではジャニー喜多川の性加害を事務所が正式に認めてから、ジャニーズ事務所所属タレントの広告起用を続けるのか否かで、大もめの状態になっています。しかし世界の広告という視点で欧米を眺めてみますと、有名俳優やタレントを使ってブランド広告を実施するというのは明かにレアなケース。なぜ、こうした世界とはかけ離れた状況を形成するようになってしまったのでしょうか。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2023年9月23日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
タレントに頼りきりの宣伝……日本だけ?
巷ではジャニー喜多川の性加害を事務所が正式に認めてから、ジャニーズ事務所所属タレントの広告起用を続けるのか否かで、大もめの状態になっています。
まあここまで深くジャニーズ事務所が国内クライアントの広告に関わってきたというのはかなり驚かされますが、そもそも、それよりも国内広告主が一定以上の広告キャンペーンを実施するとなるとすべからくそのコミュニケーションキャラクターとしてタレントを起用することが定番化しており、半ば当たり前のお話になっているのが現状です。
しかし世界の広告という視点で欧米を眺めてみますと、有名俳優やタレントを使ってブランド広告を実施するというのは明かにレアなケース。
本邦の広告市場だけが、米国などとは激しくかけ離れたところを歩んでいることとが今さらながらに理解できる状況となっています。
なぜ、こうした世界とはかけ離れた状況を形成するようになってしまったのでしょうか。
すでに60年代のテレビ広告が主流になった頃からタレント起用の広告は鮮明に
日本の広告業界も放送業界も、もともとは米国のそれを真似て作り出したもの。しかし、その形成過程で米国にはない商慣習を生み出すことになり、ある意味、他国みは見られない独自の仕組みが導入・定着化することになっています。
まずその1つとなっているのが、大手代理店が4媒体の媒体社の販売代理店となり、一定のマージンを得て、国際財務報告基準(IFRS)の決算の仕組みが導入される前までは、媒体売上も自社の売り上げとして計上してきたことが挙げられます。
この仕組みはタレント広告の普及とは一見なんの関係もないように見えますが、クリエイティブだけ担当すれば商売がお仕舞になる欧米のエージェンシーとは違い、媒体出稿も含めてトータルに広告プロモーションが評価される本邦の代理店は、タレント広告の普及と定着化に結果的に大きく貢献する動きを見せることになりました。
広告を露出したときに有名タレントや俳優を利用すれば、広告主の認知理解も進み、タレントの好感度・イメージがそのまま商品のブランディングにも寄与します。そのため、短期間での媒体露出でも大きな成果になることを理解した代理店は、国内ではタレント広告導入の下支えとして機能してきたことがうかがわれるところです。
現実のところ、タレントを起用したことで成功したプロモーション経験を得た広告主も少なくない状況。こうしたことから、本邦の広告には「タレント起用」がよくも悪くも完全に定着することとなります。
なかには広告主がタレントを気に入って「企業の顔」として長く付き合うという特別なケースも示現することとなりました。世界的に見てもこの状況はかなりレアで、ほかにないことに気づかされます。