大阪万博での「ライドシェア」導入検討に呼応するかのように、岸田政権も本格的に国内解禁を検討しているようです。はたして日本でうまくいくのか。すでに900都市以上で導入を果たした「Uber」では、参加した個人経営者がかなり多くの問題を抱えるようになっており、導入当初では考えられなかった問題も顕在化しつつあります。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2023年10月21日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
ついにライドシェアが日本にも?
大阪万博を目指して大阪府がライドシェアを検討しはじめたのを後追いするかのように、岸田政権も本格的にライドシェアの国内導入を検討しているとのこと。
3年近くの周回遅れを経て、この仕組みが本邦にも導入される可能性が極めて高くなりました。
このライドシェア、車を所有する運転手が相乗りを含めてお客を送迎するという、平たく言えば「白タク」の公式利用というイメージがあります。
ところが、すでに900都市以上で導入を果たしたUberでは、参加した個人経営者がかなり多くの問題を抱えるようになっており、導入当初では考えられなかった問題も顕在化しつつあります。
周回遅れの導入となる本邦では、こうした問題をひとつずつ解決させていけば日本に馴染むシェアライドが実現するのかも知れません。しかし、決して良いことばかりではないようで、都市部と地方とではまったく異なる問題に本当に対応できるのかどうか、注目されはじめています。
間違いなく導入初期に割を食うのはタクシー・ハイヤー業界
この領域でもっとも参考にすべき事業者といえば、やはり「Uber」ということになります。会社設立からすでに13年を経て、ライドシェアのサービスレベルも各地区の市場特性にあわせて驚くほど細かくセグメントされはじめています。
最大4人の乗客に対応する運転手つき車両での走行が基本となっていますが、すでにそれ以外のレベルも様々な価格で提供を始めている状況です。
たとえば黒塗高級車・新車・プレミアム級の車・レザーシート付きの車・SUV・ミニバン・バン・ハッチバック・電気自動車・ハイブリッド車・オートバイ・三輪タクシー・他の乗客と一緒の低コストな相乗りなどがそれにあたります。
ただ、どれだけセグメントを細かくしても、個人事業主がそのセグメントにサービスを提供してくれなければ成立しませんから、本邦で行う場合、当初は小さな車での相乗りしかサービスが成立しない可能性もあります。このあたりのセッティングは、市場の現実にあわせてかなり慎重に行う必要がありそうです。
またこの手のサービスが始まると初期の段階で大きな影響を受けるのが、タクシー・ハイヤー業界です。多くの事業者が廃業や規模縮小に追い込まれた後に、本当にライドシェアの仕組みがその分の供給を維持できるのかどうかも大きな問題になりそうです。
つまり、専業事業者が撤退を余儀なくされた後で、ライドシェアを行う個人事業主も商売として成り立たず、その数が減少することで送迎ビジネス自体が終焉を迎える……という恐ろしい事態もありうることは当初から意識しておく必要があるということです。
法人タクシーの運転手は長いこと飽和状態でなかなか思うように仕事ができないといった印象が強かったものですが、実は2000年台初頭40万人近くいたはずのドライバーは直近では20万人を切りかねないところまで半減しており、ビジネスを上手く切り分けることができれば、両者が生存できる可能性も残されています。