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税理士が見た「インボイス制度」開始1ヶ月の大混乱。着々と“増税”の足がかりが作られている=俣野成敏

インボイスで仕事を切られても、弱者いじめには当たらない!?

俣野:免税業者のままでは、取引先に嫌厭され、仕事を切られる可能性があるというのは、以前から指摘されてきたことです。

たとえばアニメの声優などを生業にしている個人事業主のうち、インボイス導入後は3割弱が廃業するのではないかとネットで騒がれていましたよね。

横田:日本には、下請けいじめを防止する目的で、下請代金支払遅延等防止法(下請法)があります。インボイス未対応の免税事業者に対して、仕事の依頼者が、立場を利用して消費税を支払わなかったり、価格の引き下げを行ったりした場合、下請法に抵触します。

ところが、公正取引委員会が「免税事業者であることを理由に取引を停止しても、法律に違反しているとは言えない」との見解を示しました。誰と取引するのかは、商取引の原則で自由だというのです。
※参考:[農家の特報班]インボイス理由で取引停止 一方的通知「寝耳に水」 – 日本農業新聞(2023年10月18日配信)

俣野:確かに、法律には抵触していないかもしれませんが、今回の改正が、そうした行為に口実を与えてしまったように見えなくもありません。

横田:インボイス開始後、クライアントからよく問い合わせを受けるのが、「振込手数料は、売り手と買い手のどちらが支払うのが正しいのか?」といったことです。

振込手数料は、買い手が支払うのが通例だとは思いますが、中には最初の交渉で売り手側が支払っている場合もあります。

しかし今後は、売り手が払うとインボイスの処理がやや複雑になるため、改めて「どちらが支払うか?」といった蒸し返しが起きているのです。

俣野:今まで惰性で動いていたものが、今後は惰性のままではいられなくなりそうだ、ということですね。

(参考文献:毎日新聞Web:2023年9月7日、公正取引委員会HP、ほか)

政府がどうしてもインボイス制度を広めたい事情

俣野:反対者多数で今後、インボイス制度が撤回されるようなことはないのでしょうか。
※参考:インボイス反対署名54万筆 小規模事業者の不安渦巻くなか導入へ – 朝日新聞デジタル(2023年9月29日配信)

横田:難しいと思います。ですから、今後は「どのように適応していくか?」が大事になってくるでしょう。

俣野:横田さんは、今後はどうなっていくとお考えでしょうか。

横田:インボイス制度の導入は、政府が思い描いている未来を実現するためのスタートに過ぎません。

もともと電子化の推進は、政府の悲願です。現在は欧米諸国を中心に、国際規格の電子インボイスが進行していますから、日本もこれを追随しているのだと思います。

もし、電子インボイスのフォーマットを統一できれば、国際取引にも対応でき、不正もしにくくなります。今は書式もバラバラで、手書きの領収書なども認められていますが、これらがすべて電子化に一本化されれば、経営の自動化が一気に進むに違いありません。

現在、中小企業に認められている簡易課税制度や免税事業者は、国がインボイス制度を徹底させる上での障壁になっているとも言えるのです。

俣野:いずれは、免税業者が淘汰されていく、と。

Next: 増税しやすくするための伏線?個人事業者が生き残る術は…

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