京都府京丹後市産の高級ブランドガニ「間人(たいざ)ガニ」を巡る産地偽装事件で、偽装を手伝ったとして、間人ガニの漁を行う漁船の船主の妻を、不正競争防止法違反ほう助容疑で地検舞鶴支部に書類送検したと報じられている。
報道によると、女は間人ガニの漁を行う漁船の船主が管理し、ブランドの証としてカニに取り付けられる“タグ”を、産地偽装の目的と知ったうえで、同市内の水産加工販売会社の役員を務める男に譲渡したということ。
女は容疑を認めているといい、「15年前から渡していた」と供述しているとのこと。府警は女が同社に高額でカニを購入してもらう代わりに、年間100~200本のタグを横流しした可能性があるとみている。
タグ“流出先”の水産会社関係者はすでに逮捕済み
1990年代の頃より行われてきた、15~20段階ともいわれる徹底した選別、また鮮度をより高く保持するための様々な方策を導入したことで、輸入物のみならず国内他地域産のズワイガニとの差別化やブランド化に成功し、その知名度を高めていった間人ガニ。
品質の高さはもとより、流通量もごくわずかということで、初競りでは1匹10万円を超える高値がつくこともある間人ガニなのだが、その証となるのが個体ひとつひとつに取り付けられている緑色のタグ。
なんでも、そのタグの管理はわずか5隻のカニ漁船の船主によって、厳密に行われていたということなのだが、今回はそのうちのひとつの船主から、タグが不正に流出していたということ。
ちなみにそのタグを入手し、他地域で水揚げされたズワイガニを間人ガニと偽って販売していた、京都府京丹後市内の水産品加工販売会社の代表ら2人は、今年の4月頭に不正競争防止法違反(誤認惹起)などの容疑で、すでに逮捕されている。
消費者への“見下し”が産地偽装を呼ぶ?
今回のような産地偽装を巡るニュースは近年後を絶たないといった状況だが、そのターゲットとなることが多いのは、間人ガニもそうだが、いわゆる高級食材の類。
なかでもウナギに関しては、昨年12月には愛知県西尾市の人気ウナギ料理店での不正が明るみになったのをはじめ、国産のものと比べて半値程度で仕入れることができる中国産を実際に使用しながら、それを国産と偽って提供していたという不正が相次いでいる状況だ。
ただ、そういった類の産地偽装のケースでは、嘘を付いて中国産を提供していた料理店の評判が下がることはあれど、例えば西尾市の場合なら“三河産ウナギ”といった、ブランドそのものの価値は辛うじて保たれるといった格好。だが、今回の間人ガニの場合では、その価値の証となっていた“タグ”に関する不正ということで、ブランドそのものの価値への不信は避けられないところである。
しかも、先述した水産品加工販売会社の人間にいたっては、逮捕直前に受けた一部メディアの取材に対し、こともあろうか「味の違いわかるわけない」といった趣旨の発言をしていたとのこと。
要するに彼らは、素人には味の違いなど分かるはずはなく、間人ガニというブランドネームを有難がっているだけだと、一般消費者を見下していたようなのだが、さらに言えば、所詮間人ガニも他所で獲れたズワイガニも、味にはさほど大差はないと言っているのと同じということで、間人ガニに対して世間が抱いていた幻想を、まさにぶち壊す発言となったのだ。
「信頼を失うのは一瞬」とはよく言われる言葉だが、間人ガニもかれこれ30年以上もの歳月をかけて育んできたブランドへの信頼が、今回の件で一気に水泡に帰してしまう事態となってしまったようだ。
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