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「AFURI」巡る商標権争いに進展。1年経っても消えぬ「強欲ラーメン屋」の悪評…地名を含む商標権の主張はもはや“悪手”か?

人気ラーメンチェーン店「AFURI」(AFURI社)と神奈川県伊勢原市にある日本酒の醸造所「吉川醸造」とが、「AFURI」という商標を巡って争っている件で、ここに来て進展があったとSNS上で取沙汰されている。

2024年5月16日に動きがあったのは、吉川醸造の「雨降」という登録商標に対して、AFURI社が請求した無効審判の審決取消訴訟。

先に特許庁が、吉川醸造の登録商標「雨降」が無効ではないとの審決を出したことを受け、AFURI社がその取り消しを求めて訴えを起こしたというものだったのだが、判決の結果はAFURI社の敗訴で、吉川醸造の登録商標は有効だと認められたという。

もっとも今回の裁判は、両者が争っている商標権侵害訴訟とは関連があるものの、別の訴訟であるということで、そちらは目下のところ係争中で決着は付いていない状況。

ただSNS上では、“AFURI社の敗訴”との言葉が半ば一人歩きしているようで、さらには「ざまぁねぇな」「ラーメン自体はうまいのだが、企業としては問題があったよう」「改めて、ラーメン屋のAFURIを極めて固く拒否・拒絶いたします」などと、AFURI社に対する批判的な反応が多くあがっている状況だ。

明暗が分かれた両者の初期対応

AFURI社が吉川醸造が製造販売している日本酒「雨降(あふり)」に付された商標が、商標権の侵害にあたるとして、吉川醸造を提訴したことが判明したのは23年8月のこと。

そもそも“あふり・AFURI”とは、神奈川県丹沢山系の東端に位置する大山(阿夫利山)、いわゆる地名をルーツにした名称。

この件が世に知れ渡るきっかけとなった吉川醸造側のリリースによれば、AFURI社はその“AFURI”絡みの商標を、ラーメンだけでなくそれ以外の150種類以上の物品に関して取得しており、吉川醸造に対しては、商標権を侵害しているとする商品のすべてを廃棄処分にすることを要求したとのこと。

しかしこれが、世間からは「地名由来の商標を独占する自分勝手な所業」と捉えられ、さらには対象商品の廃棄処分を要求したことも「傲慢な態度」だとされ、AFURI社には「強欲ラーメン屋」などの批判が渦巻く展開となったのだ。

【関連】AFURI、日本酒「雨降(あふり)」の酒蔵を商標権侵害で提訴。地名由来の名称の“独占”に「強欲ラーメン屋」など批判が殺到&不買運動への発展も

いっぽうでこの件に関しては、AFURI社側からも数日遅れてリリースが公表され、吉川醸造が商標権を侵害していることを改めて指摘するとともに、吉川醸造には「AFURI」の使用を中止することを条件に在庫販売については認めており、商品の廃棄を求めていたわけではないと説明。

ただ、それよりも先に世に出る格好となったのがAFURI社の代表によるFacebook投稿で、これが自社の商標権侵害の提訴に関して「正当な手続き」「胸張って居られる」と主張するとともに、「どうなんでしょう? 私、間違ってるでしょうか?」と呼びかける内容に。

その少々フランクともいえそうなノリが、この状況においてそぐわないと感じる向きは多かったようで、さらには「私、間違ってるでしょうか?」といった文言も、一種の“開き直り”だと一部から捉えられるなど、この対応は世間から“マズいもの”として認識されてしまい、AFURI社側のイメージがより悪化する格好となってしまったのだ。

地名を含んだ商標権の主張は非常に難しい

今回のAFURI社と吉川醸造の争いでいえば、AFURI社による様々な商品ジャンルにおいて商標登録を取っておくというのは、昨今では中国など海外の商標ブローカーによる不正取得に対抗するといった意味合いでも、いわば当たり前の行為といったところ。

さらに、AFURI社からの公式のリリースにあった、「AFURI」の使用を中止することを条件に在庫販売については認めていたという件も、この手の商標権を巡る係争においてはいたって温情ある措置であるとの見方もあるとのことである。

にもかかわらず、今回の無効審判の審決取消訴訟の判決を巡っての反応は、先述の通りAFURI社側を悪く言うものがほとんどということで、当問題が発覚した際の吉川醸造からのリリース、さらにAFURI社代表によるFacebook投稿という、両社による初手の対応によって、多くの者に植えつけられた「強欲ラーメン屋」等といったイメージが、今もなお尾を引いているといった状況だ。

ちなみに今回のように地名由来の名称を、一企業が独占しようとしたとして世間から叩かれたケースといえば、2013年に起きた丸亀製麺の一件が思い浮かぶところ。

これは米・ロサンゼルスにあるうどん店「丸亀もんぞう」に対し丸亀製麺を運営するトリドールが、店名の“丸亀”が商標権に触れるとして、1か月以内の看板の変更や、あらゆる文章から丸亀という表記を外せといった要求の文書を、内容証明付きで送りつけたというもの。

ネット上でそのことが知れ渡ると大騒動となり、それを受けてトリドール側は「新たなアクションを起こす予定はない」と、あわてて矛を収めたのだが、世間とりわけ地元・香川県民の間での丸亀製麺に対するネガティブイメージが、10年以上経った現在もなお根強く残る格好となったというのだ。

【関連】丸亀製麺、ついに香川県内は残り1店舗に…。「発祥は兵庫」うどん県の民に“外敵”同然の扱いをされるなか、完全撤退は絶対に避けたい事情とは?

この一件にしても、トリドール側の行為は商標業界では一般的に行なわれているもの、すなわち丸亀製麺というブランドネームが損なわれないための、ごく通常の企業努力であるとの見方もあるようなのだが、それでも実際のところはトリドールばかりが汚名を着せられる結果に。

こういったことからも、地名を含んだ商標権の主張は非常に難しく、かなり慎重にならざる得ないところ……というか、もはや悪手だといっても過言ではなさそうで、現に今回のAFURI社も、まさに10年前のトリドールと同じ轍を踏む流れとなってしまっている状況だ。

Next: 「商標登録の有効無効と商標権侵害は別の話です」

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