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消える「スーパーカブ50」ほか50cc以下原付バイク。その代わり交通ルールを学ばぬ電動キックボード乗りなどが大増殖するのは必至の流れか?

ホンダが原付きバイクのうち、排気量50cc以下のモデル生産を終了することが判明。長年当ジャンルで人気を誇った「スーパーカブ」シリーズでは、「スーパーカブ50」が惜しまれつつ消えることとなりそうだ。

ホンダの原付きバイクといえば、1958年に販売を始めた先述の「スーパーカブ」シリーズが特に有名で、これまで累計1億台以上を生産。世界で最も売れたバイクとして知られ、国内では郵便や新聞配達など主に商用で使われた。

しかし、国際基準に合わせて25年から始まる排ガス規制では、50㏄以下のエンジンの場合、排ガスを浄化する機能が不十分で、またその対応も難しいということで、排気量50cc以下のモデルの生産終了という決断となったよう。バイクでシェア(占有率)トップのホンダによる判断は、他メーカーにも影響を与えそうだ

生産台数は40年以上前と比べて1割以下に

日本国内はのみならずアジアや北米などでも人気を博したスーパーカブだが、その数ある魅力の大きな一つといえるのが、その燃費の良さ。例えばスーパーカブ50のカタログスペックをチェックしてみると、その燃料消費率は105.0km/Lとかなりの低燃費ぶりを誇る。

それゆえ、これだけ燃費が良いスーパーカブがどうして規制に引っかかってしまうのか……と訝しむ声も一部からはあがっているのだが、排ガス規制云々の話はそういったことではないようだ。

というのも、バイクの排ガス浄化に使う装置はエンジンで温める必要があるのだが、50cc以下のエンジンだと、その温度上昇に時間がかかるということ。ホンダをはじめとしたバイクメーカーは、現実的なコストでこの新規制に対応するのは難しいとみて、続々と撤退を決めたということだ。

しかも、先述の通り昔は売れに売れていた原付バイクだが、このところの販売台数は低迷の一途だったよう。日本自動車工業会によれば、ホンダ以外の他社も含めた50㏄以下の原付の生産台数は、1980年に約250万台だったのと比べ、2022年は約15万台まで大幅に縮小していたといい、ある意味で潮時なタイミングでもあったようである。

そんななか、25年から始まる排ガス規制で、各社の50㏄以下の原付が市場から消えてしまう状況を受けて、警察庁では最高出力を4キロワット以下に抑制した125㏄以下の小型バイクを「新基準原付き」「新原付」として扱い、現行の原付免許でも運転できるよう、道交法の改正を目下検討中だということ。

またバイクメーカー側もそれとは別に、現在の50cc~125cc以下の第2種原動機付自転車、いわゆる原付二種のアピールにも躍起で、50ccの原付とは異なり2人乗りが楽しめる、または二段階右折が不要といった点などを推しているようだ。

しかし、それらのモデルは従来の50㏄以下の原付と比べると、やはり車体は大きく感じられるということで、小柄で扱いやすかった従来の原付に慣れ親しんでいるユーザーが、原付二種あるいは今後出てくるであろう「新原付」モデルにすんなり移行するのか、あるいは「原付二種」や「新原付」が今後若者の間で人気を博すのかどうかは、なんとも微妙な情勢と言えそうである。

学科試験すらないキックボードなどに人気が集中か

そんななかで先述した通り、原付の販売低迷を招いている、近年における一因とされるのが、やはり電動アシスト自転車や電動キックボードの普及だという。

排ガス規制が始まる25年以降は、そういった乗り物がさらに道路上において幅を利かすことが考えられるのだが、SNS上などではそういった状況に今から戦々恐々といった向きも多いようだ。

従来の原付免許といえば、学科と実技の教習をしっかりと受ける普通免許に付随して取得するパターンは当然だが、16歳になり原付免許だけを取りたいという若者でも、学科試験が存在することから、一応はなんらかの対策を講じて試験を受けに行くものだった。

ところが、それに対して電動アシスト自転車は年齢制限はなし、また電動キックボードに関しても、時速20キロを超える速度を出せない「特定小型原動機付き自転車」に定義されるものでれば、16歳以上なら免許なしで運転できるといった状況だ。

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実際、上記のように電動キックボードが免許なしで運転できるよう緩和された、昨年7月の改正道交法施行以降、それらに関連する交通事故が大きく増加しているとの報道もあり、ある警察幹部によれば「交通ルールをよく知らずに乗っている例も散見される」のだという。

排ガス規制によって、スーパーカブ50をはじめとした50㏄以下の原付が消えゆく裏で、基本的な交通ルールをまったく学ばずして路上に出てくる、電動アシスト自転車や電動キックボード乗りのさらなる大増殖……といった非常事態を招くのは、どうやら必至の情勢のようだ。

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