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英国EU離脱懸念の次に待ち構える米国発「イエレン・ショック」の中身=藤井まり子

本家アメリカで、「イエレン・ショック」がとうとう走るのか?

この夏は、「EU離脱懸念」以外にも、様々なリスクが台頭しそうです。「中国リスク」も台頭しそうですが、それよりなによりも、「イエレン・ショック」「アメリカドル国債バブル崩壊」のようなものが、この夏のマーケットを駆け巡るかもしれません。

この夏のリスクマーケットの調整局面の震源地は、イギリスでもなければ中国でもないかもしれません。震源地はアメリカになるかもしれません。アメリカ経済減速懸念です。

イエレンFOMCは、6月15日のFOMCで大方の予想通りに「二度目の利上げ着手」を見送りました。

今回のFOMCでも、再びFOMCメンバーのドットチャート(FFレートの見通し)が下方修正されました。さらには、FOMCメンバーのFFレートの長期見通し(=中立金利)も下方修正されました。

この日のFOMC発表の中身でも、アメリカ経済減速懸念が徐々に徐々にマーケットに台頭しています。ジワリじわりと浸透し始めているのです。

今回のドットチャートでは、「今年2回の利上げ」を予測するメンバーは17人中9人と「変わらず」でしたが、「今年1回の利上げ」を予測するメンバーが17人中6人と急増しました。

さらに、「来年2017年は2回だけの利上げ」を予測するメンバーが6名にものぼりました。

ちなみに、このドットチャート、毎回毎回、予想を引き下げて来ています。

2017年、2018年の「利上げはゼロ回」のメンバーが1人現れたことは、かなりの「驚き」でした(米セントルイス地区連銀のブラード総裁だと見られます)。

ちなみに中立金利とは、景気刺激的でもなければ景気抑圧的でもない金利水準のことです。
この長期の中立金利の予測については、前回は、3.250%とする人が多数派(7人)でしたが、今回は、3.00%とする人が多数派(6人)になり、2.75%とする人も3名も現れてしまいました。また引き下げられたのです。

アメリカ経済は長期停滞へ?

これは何を意味するかと言うと(詳しく説明していたらきりがないのですが)、FOMCメンバーの中でも、「アメリカ国内の経済の生産性が低下している疑いを持つ人々が急増している」「アメリカが長期停滞に陥っているのではないかと再び考え始めている人が急増している」ということです。

新自由主義の下、アメリカ政府は永らく「小さな政府」を目指し過ぎて、アメリカ国内の港湾や道路はボロボロになっているところが大変多くなっています。

一方、民間部門では、永らく設備更新しないできた多くの企業たち。新自由主義経済の下で、企業経営者たちは、借金してまで、「高配当」や「自社株買いによる高株価」を維持して、自らの報酬を巨額にしていました。生産性をアップして業績を上げて、従業員の賃金アップを目指していた「正統派の企業」は、アメリカではマイナーだったようなのです。

中間層及び下層の労働者たちは、資本家に搾取されるだけ搾取されて、アメリカでは中間層が崩壊。まじめに働く労働者が激変しているようなのです。複合汚染ですね。

もちろん、アメリカは、人口が年率およそ0.8%前後で増加している国です。今のところ、アメリカ国内の住宅価格や株価は高い水準を保っていますから、資産効果で個人の購買力も高い水準に保たれています。

けれども、6月3日の「雇用統計ショック」(非農業部門の雇用創出が4万人に満たなかったこと)が示すように、完全雇用がほぼ達成されつつあるアメリカ国内の多くの企業では、生産性が低下しているせいで、これ以上企業業績を上昇させることが出来ずに、これ以上の賃金上昇には耐えきれないところが続出しているのではないでしょうか?賃金上昇の結果、雇用を手控えている企業が続出しているのではないでしょうか?

ここ30年ばかり、アメリカの生産性の年率の伸び率は低下し続けて、今年はマイナスに転じたのではないかとの指摘もあるほどです。

2015年12月にイエレンFOMCの「11年ぶりの利上げ着手」で、「アメリカ経済は健やかな成長軌道にあるから利上げ着手は可能だ(イエレン&フィッシャー派)」と、「アメリカ経済は長期停滞の中にあるから利上げは不可能だ(ローレンス・サマーズ派)」という「利上げ反対派」との間での論争は、いったんはイエレン派に軍配が上がったものの、2016年6月に入って、再び、「長期停滞論」者がFOMC内部で急増してきているようなのです。

何を隠そう、イエレンFRB議長その人も「長期停滞論者」であるとの噂がウォールストリートでは飛び通っています。

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