ハワード・ルトニック商務長官は、トランプの政策は、たとえ景気後退を引き起こしたとしても「それだけの価値がある」と述べた。スコット・ベッセント財務長官は、経済が政府支出に依存するようになった後、「デトックス期間」が必要になるかもしれないと述べた。そしてトランプ自身も、自分の政策の効力が出てくるには時間が必要で、それなりの「移行期間」があると述べている。
このように、景気後退の様相が明らかになっても、明らかにトランプ政権には焦りのようなものはまったく見られない。むしろ不況はトランプ政権が推し進める大胆な改革の実行に伴う必要悪であると見ているようだ。
またトランプ政権は、国債の利払い費の増額を抑えるため、「FRB」に利下げを強く要求している。しかし「FRB」はこの要求を拒否している。トランプ政権は、利下げせざるを得ない環境を作るために、相場の下落と景気の悪化をむしろ歓迎しているとの見方もある。
トランプ政権の認識「アメリカは持続不可能」
このような認識をトランプ政権が持つのは、バイデン政権がコロナのパンデミックの対策で推し進めたバラマキの政策によって、連邦政府の財政状況が極端に悪化し、しばらくすると連邦政府は持続できなくなると危惧しているからだ。
ちなみにバイデン政権は、2021年に新型コロナウイルスの感染拡大に対する1兆9,000ドル(約200兆円)規模の追加景気刺激策を実施している。国民1人あたり1,400ドル(約14万5,000円)の直接給付を含む1兆ドル(約104兆円)の家計支援のほか、4,150億ドル(約43兆円)の新型ウイルス対策支援や4,400億ドル(約46兆円)の中小企業支援が盛り込まれている。これ以降もほぼ同規模の支援策が実施され、米経済の大きな落ち込みを抑えることができた。
しかしながら、その余波はあまりに大きかった。トランプ政権を支持する専門家やジャーナリストが頻繁に引用する統計的データを見ると、危機感を抱く理由もよく分かる。いくつか代表的なものを紹介しよう。
<1. 政府支出の極端な増大>
まず政府支出だが、指数関数的な速度で拡大している。下のグラフから分かるように、連邦政府の支出は1980年当時と比較して、現在ではおよそ14倍に膨れ上がっている。

また、連邦政府の支出はパンデミック前の最後の1年間に比べ、年間およそ3兆ドル増加している。パンデミックが沈静化すると、連邦政府の支出は少し減少したが、今また指数関数的な速度で増加し始めている。赤丸で囲ったバイデン政権後の増大ペースはあまりに極端だ。
<2. 政府債務の増大>
米国の政府債務は爆発的に増加している。パンデミック対策に必要な政府支出は国債の発行で賄われたからだ。米国政府の負債は36兆ドルに達している。米国の負債は、ロナルド・レーガンが初めてホワイトハウスに入ったときの約36倍に膨れ上がっている。

残念ながら、その増加は驚異的な速さで続いている。目下、予算削減が行われているが、それでも今年中に負債はさらに数兆ドル増えることになる。特に、赤丸で囲ったバイデン政権成立後の増加速度はすさまじい。







