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黄門様はどこに消えた?悪代官と越後屋が癒着する現代日本「悪の構造」=施光恒

財界と政界が癒着する「企業担当制」の問題点

これ、普通に考えれば、おかしな話ですよね。あからさまに日本の政権の高級幹部とグローバル企業が結託し、グローバル企業に様々な便宜をはかりますよということですから。

もちろん海外からの投資が増えれば、国内に雇用が生まれ、経済が活性化することもなきにしもあらずです。しかし、当然ながら、外国企業の利益と日本の一般国民の利益は、必ずしも一致するとは限りません。むしろ、両者は乖離してしまう場合が多いのです。

言うまでもなく、グローバルな企業や投資家は、日本国民の生活の安定や福祉、日本の社会や経済の長期的発展などに特段の関心を持ちません。端的に自分たちの利益のみを追求してきます。

例えば、外国企業からすれば、日本に進出する際、労働法制はなるべく緩い方が望ましいのです。従業員のリストラはしやすいほうがいいですし、残業代もできれば払いたくないでしょう。社会保障費の会社負担が少ないことも望むはずです。法人税率も低いに越したことはありません。賃金も安いほうがいいので、日本が外国人労働者や移民を大規模に受け入れてくれた方がありがたいのです。各種の安全基準や環境基準、健康基準も、なるべく緩いほうがグローバル企業にとってビジネスしやすく望ましいのです。

このようにグローバル企業の利益と日本の国民一般の利益とは、多くの場合、一致しません。それなのに、政府の高級幹部が、グローバル企業の要望を直接的に聞いて便宜を図る体制を作ってしまって大丈夫なのでしょうか。

日本政府の官僚がグローバル企業の御用聞きに

企業担当制はすでに始まっており、現在では、実際にいくつかのグローバル企業に日本政府の高級幹部が担当者(御用聞き)としてついています

次のようなグローバル企業です。

IBM(情報システム)、エア・リキード(化学)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(医療機器)、スリーエム(化学)、デュポン(化学)、ファイザー(医薬品)、フィリップス(医療機器)、マイクロンテクノロジー(半導体)、メルク(医薬品)。

(詳細は下記の内閣府ホームページのなかほどの【公募結果】の箇所「対象企業」というPDFファイルをご覧ください)。
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10193682/www.invest-japan.go.jp/investment_advisor_assignment_system/index.html

例えば、このファイルによりますと、ジョンソン・エンド・ジョンソンやファイザー、フィリップス、メルクといった医薬品や医療機器関連の企業の場合、厚生労働省の副大臣が「担当者」としてつくようです。こうしたグローバル企業は、日本でビジネスしやすいように、日本の各種規制やルールを緩和もしくは撤廃するように担当者である副大臣に要求することになります。

医薬品や医療機器のグローバル企業の担当者としてつくのが、経産省の副大臣ならまだ理解できないことはないですが、厚労省の副大臣であることに非常に大きな懸念を覚えます。厚労省とは、本来、日本国民全体の健康や安全を長期的観点から守るためにあるはずです。そうであるはずなのに企業担当制の下では、厚労省は、実際のところ外国の医薬品メーカーや医療機器メーカーの声を直接的かつ優先的に聞き、便宜をはかる存在となってしまっていないのか大いに心配です。

近い将来、例えば、薬や医療機器の価格決定システムや著作権保護に関して、国民一般にではなく、グローバル企業のほうにもっぱら有利な規制緩和やルール変更が行われたりする恐れはないのでしょうか。

こうした懸念は、ごく普通のものだと思うのですが、政府は、あまり自覚がないようです。つい先日(3月27日)も、外務省、内閣府、経産省などが主催した「日米欧ビジネスセミナー――双方向の投資拡大が切り拓く日米欧経済関係の新時代」という会合で、政府の幹部は、グローバル企業関係者の前で「企業担当制」を宣伝し、日本に投資するように呼び掛けていました。

近い将来、例えば、モンサント社と農水省の副大臣が直結してしまい、様々な規制緩和やルール変更が行われていく――などというあまり考えたくない事態も生じるのかもしれません…。

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