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「ヘリコプターマネー」導入で日本が操縦不能になるシンプルな理由=東条雅彦

国債の「無利子永久債」化で日銀のバランスシートはどう変化する?

「無利子永久債」の弱点を、実際の数字を使って検証していきます。2015年度末の日銀のバランスシートは次のようになっています。
※出典:日本銀行(※兆円未満は切り捨て、数字を単純化して転記)

<現在の日銀のバランスシート>

(資産の部)405兆円
・国債 349兆円
・その他 56兆円
★資産の部合計:405兆円
(負債の部)402兆円
・預金 282兆円
・その他 120兆円
(純資産の部)3兆円
・準備金 3兆円
★負債及び純資産の部合計:405兆円

このように現在は、借方、貸方ともに、405兆円でバランスされており、資産として国債を349兆円計上しています。国債は将来的に政府から元本を返してもらえるはずなので、349兆円の価値があり、会計上も「資産」として計上できるわけです。

ところが、もし保有国債の約10%に当たる35兆円を「無利子永久債」にした場合、バランスシートは次のように変化します。

(資産の部)405兆円
・国債 314兆円
・無利子永久債 35兆円 ←実は資産価値がない!
・その他 56兆円

この35兆円の「無利子永久債」は会計上、価値がないため、0円としなければいけません。すると、最終的には次のようになります。

(資産の部)370兆円 ←405兆円から35兆円が減少!
・国債 314兆円
・無利子永久債 0兆円
・その他 56兆円

「資産の部」が405兆円から35兆円減って、370兆円となりました。すると、「純資産の部」に評価損が発生し、3兆円-35兆円=▲32兆円の債務超過に陥ります(※▲はマイナスの意)。

<20XX年の日銀のバランスシート>

(資産の部)370兆円
・国債 314兆円
・無利子永久債 0円
・その他 56兆円
★資産の部合計:370兆円
(負債の部)402兆円
・預金 282兆円
・その他 120兆円
(純資産の部)▲32兆円
・準備金 3兆円
・評価損 ▲35兆円
★負債及び純資産の部合計:370兆円

このように、日銀を債務超過に陥れる「無利子永久債」は現実的な手法ではないことが分かります。

債務超過になれば、政府が出資して日銀を救済しなければいけません。しかし今は政府自体の財政収支が恒常的に赤字(年間40兆円ペース)になっていて、日銀を助ける余力はありません。むしろ、政府は日銀に助けられている立場です。

財政問題を「裏ワザ」で解決しようとする「俗論」に、惑わされてはいけないのです。

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