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一気に世界株高・外貨高。しばらく堅調地合いの持続を予想=馬渕治好

今週は、多少の揺り戻しはあっても、世界的な株高・外貨高が持続すると予想します。トルコのクーデターも未遂に終わり、明るい流れが阻害されるには至らないと考えます。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年7月17日号の抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

先週の振り返りと今週(7/18~7/22)の注目ポイント

過ぎし花~先週(7/11~7/15)の世界経済・市場を振り返って

米国経済の好調さが世界的な株高・外貨高を招く、日本は政策期待も上乗せ

(まとめ)
先週は、世界的に全面的な株高となり、外貨相場も全面的な外貨高・円安となりました。この背景としては、先週の当メールマガジンで予想したように、前週末の雇用統計の堅調さによる米株の上昇が、米長期金利や米ドルの上昇を遅れて引き起こし、世界的に投資の安心感を広げた、という点が大きいと考えます。また、そもそも「英国のEU離脱はリーマンショックの再来だ」などという根拠のない悲観論が、馬脚を現し脆くも崩れ去ったという面もあるでしょう。

また、日本株の上昇が特に大きかったですが、これは前週までの日本市場のダメダメぶり、すなわち「何のリスクがあっても、とにかくリスク回避のための円買い」「円高になれば、とにかく日本株売り」といった、ろくに何も考えていないトレードが行き過ぎていた、というところが大きいです。また、参院選の与党勝利と、政府の景気対策への踏み込みを受けて、経済対策に対する外国人投資家の期待が膨らんだ、という要因も指摘できます。

米国市場の週末引け間際に、トルコでクーデターが勃発したとの報道が伝えられましたが、クーデターは失敗に終わりました。

(詳細)
先週の世界市場においては、全面的な株高・外貨高となりました。そこで今号では、まず先週の世界の主要な株価指数の騰落率ランキング(現地通貨ベース)からみてみましょう。

先週の株価上昇率ベスト10は、順に、日経平均、TOPIX、オーストリア、アルゼンチン、チェコ、トルコ、エジプト、香港、ブラジル、ドイツでした。日本の株価上昇が目立つ形で、2位のTOPIXの週間上昇率は8.86%と、3位のオーストリアATX指数の6.99%から、かなりの開きを見せています。なお、トルコが上昇率上位に入っていますが、後述のクーデター勃発前に市場が引けていることに注意する必要があります。

一方、先週株価が下落した国は、1つもありませんでした。そこで、株価が上昇はしたが、上昇率が小さかった国々を順に見ていくと、ワースト10は、ハンガリー、ニュージーランド、スリランカ、デンマーク、英国、ナスダック総合、スイス、S&P500、カナダ、ノルウェーでした。

外貨の対円相場の騰落率ランキングをみると、こちらも、対円で下落した(円高になった)通貨は、1つもありません(トルコリラも、ロイターのデータによれば、週末のクーデターを受けた急落を含めても、週間では対円でぎりぎり上昇しています)。

一方、対円での上昇率ベスト10をみると、上昇率の高い順に、韓国ウォン、マレーシアリンギット、英ポンド、チリペソ、南アランド、コロンビアペソ、カナダドル、ノルウェークローネ、台湾ドル、アイスランドクローナとなっています。

こうしたいわゆる「リスクオン」(投資家がリスクを取って、投資を積極化する)とも見える世界的な株高・外貨高の動きは、まず米国経済の堅調さによってもたらされたと考えています。

前号の当メールマガジンでは、「今週は、米雇用統計に代表されるような米経済の堅調さが、引き続き米株を押し上げ、先週は反応の鈍かった米ドルの対円相場も、じわじわと上昇方向へ押し出されてくると期待されます。」と書きました。実際には、米国の主要な株価指数は、先週も続伸し、史上最高値を更新する局面もありました。低位で推移していた米10年国債利回りは、経済指標の堅調さや株価の上昇を受けて、1.50%をじわりと超えてきました。

米ドルは、想定以上のペースで対円で上昇をみせました。ただ、米ドルは他の外貨に比べては先週は動きが劣後しており、米国が良いから米ドルの独歩高になった、ということでは全くなく、「米国経済がよく米株が上がった→世界経済や世界の株価動向にも安心感が生じた→米ドルが対円で上昇したが、他のリスクが高いと考えられていた諸通貨が、対円で米ドル以上に上昇した」という動きだったと解釈できます。

先週発表された米国の経済指標にも、強いものが目立ちました。たとえば7/15(金)発表の小売売上高は、5月分の前月比が0.5%増から0.2%増に下方修正されましたが、6月分は0.1%増にとどまると予想されていたところ、0.6%増と大幅な伸びを記録し、5月の下方修正分を補って余りある増加となりました。

また同日発表の鉱工業生産については、5月分が前月比0.4%減から0.3%減に、小幅ながら上方修正されたうえ、6月分は0.3%増が見込まれていたのに対し、実際には0.6%増と、高い伸びになりました。特に鉱工業生産は、これまでは米ドル高により輸出品の生産が圧迫されており、そのせいで米ドル高が進むのは無理だ、という観測がありましたので、生産の伸びが高まったことは、逆に米ドル高が進んでも米国は大丈夫だ、米ドル高の余地が生じた、という考え方につながっていると思われます。

また、米国経済や市場動向が、世界的に悲観論を後退させたのは、一部の専門家が「英国のEU離脱はリーマンショック並みの危機をもたらす」など、根拠の薄い暴論を大声で叫びまわって、投資家を委縮させていたものの、そうした暴論がやはり間違っていると、次第に馬脚を現してきたことも背景にあるでしょう。

また前述のように、先週は日本株の上昇が特に大きいことが目を引きます。また、為替相場においては、外貨側だけの要因ではなく、円が全面的に安くなった、という面も多いと言えます。

このように、先週日本株高・円安が進んだ要因としては、まず前週までの「日本ダメダメ病」の行き過ぎが反動を生じた、という点が指摘できます。すなわち、どこかの国(日本を含む)でリスクが生じると、何も考えず、ただ反射神経的に円を買い、円高になると何も考えずに日本株を売る、というファンド(特に人間が運用しているのではない、プログラム売買)の存在は、当メールマガジンの先週号でも指摘しました。さすがに、理屈に合わない円買いと日本株売りに、限界が来たのでしょう。

加えて、7/10(日)投開票の参議院選挙で、与党が大勝したことを、現政権の安定維持とみなして外国人投資家が好感し、日本株を買い進めたという面もあります。

さらに、安倍首相が、選挙直後の7/11(月)に記者会見を行ない、7/12(火)に経済対策の策定を指示する旨を表明した、という動きも、外国人投資家が評価したと推察されます。好感された背景を述べると、次のような諸点が挙げられます。

1)選挙後すぐに経済対策に取り掛かったことは、予想外に早い動きだと評価された
2)建設国債の発行が検討されていると報道されたため、税収の範囲内でやりくりするのに比べ、補正予算が大規模化するとの期待が広がった
3)国債の増発と7月下旬の追加緩和の組み合わせが、「ヘリコプターマネー」を連想させた(この点は、この後の「理解の種」で詳しく述べます)
4)こうした種々の動きにより、外国人投資家の日本の経済政策に対する行き過ぎた失望が、適度な期待に揺り戻された(これについては、この後の「盛りの花」で詳述します)

この他の材料としては、7/14(木)のバンク・オブ・イングランドの金融政策委員会では、予想外に追加緩和は見送られました。ただ、政策委員のほとんどが、8月の委員会での追加緩和の検討を支持したため、市場には短期的な振れ以上の影響は生じませんでした。

トルコでは、軍事クーデターが7/15(金)に勃発しました。この一報が伝わったのが、米国株式市場の引け後、ニューヨーク外為市場の引け直前(日本時間7/16(土)午前5時半~6時頃)であったため、トルコリラは対円で36.50円近辺から、一時は34.50円辺りまで急落しました。他通貨も全般的につれ安し、米ドル円相場も105.50円辺りから、104.80円近辺に下げて週を終えています。

この他先週は、LINEの上場、任天堂の人気化と他ゲーム会社の株価下落、ファーストリテイリングの決算と株価の動きなど、興味深い出来事が多々ありましたが、これらは先週のテレビ出演などの際に触れましたし、当メールマガジンですべて述べていても長くなってしまうので、他の機会にお伝えすることができればと思います。

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