マネー創造のカギは、銀行のネットワークシステムにある
通信ネットワーク化された預金システムとともに、民間銀行も、貸付金という資産と対応する、預金という負債を造像できるようになりました。しかし、預金が引き出されれば、銀行からそのマネーはなくなるので、マネーの創造ではないという学者もいます。
ところがネットワーク化された銀行システム全体では、貸付金として創造されたマネーは銀行システム内を循環するだけで、総量が減ることはない。まさにマネーは支払った個々の主体では減っても、全体では、同額を受け取った人がいるので、減らずにめぐるのです。
(注)銀行システムの中の預金マネーが減るのは、現金で引き出され、それが預金されないときです。
事例:山田さんの場合
(1)まずA銀行の内部で、「山田さん」の預金口座から引き出され、例えば「福原産業」の預金口座に何かの代金として送金された場合、A銀行が貸付金として創造したマネーの量は、変わりません。山田さんの口座から、福原産業の口座に(同一銀行内で)移っただけです。
(2)A銀行から、別のB銀行の預金口座への移動の場合は、A銀行のマネーは減って、B銀行のマネーが増えます。預金は、全額ではないにせよ、引き出されるからです。
(3)しかし実際のマネーの銀行間移動では、A銀行からB銀行への送金(決済)は、B銀行からA銀行への送金と、ほぼ釣り合っているのです。一方的にマネーが減る銀行は、マネー不足で倒産します。倒産しないということは、1日では入金と出金が不均衡であっても、1か月合計では若干の差異はあっても均衡しているのです。これは、A銀行からB銀行への送金と、B銀行からのA銀行への送金が釣り合っていることを意味します。
(4)このため、A銀行とB銀行は、ほぼ同時に以下のようになっているのです。
【A銀行】
資産 | 負債 |
---|---|
貸付金 1億円増加 | 預金 1億円増加 |
【B銀行】
資産 | 負債 |
---|---|
貸付金 1億円増加 | 預金 1億円増加 |
【A・Bの両銀行の合計】
資産 | 負債 |
---|---|
貸付金 2億円増加 | 預金 2億円増加 |
結果は、銀行ネットワークの中で、A、B銀行の2億円の貸付金の増加の分、預金が増えています。
これが銀行による信用創造、言い換えれば預金創造です。銀行システムは、マネーの引き出し権という預金を、貸し付けによって「創造」しているのです。
(注)預金が、紙幣で引きだされ、銀行システムの外のタンス預金になったときは、預金システムの中から、マネーが流出したことになります。
現金の利用は、銀行送金のリアルタイム・オンラインシステム化と、クレジット・カードによりどんどん減ってきています。海外銀行に流れたときは、その国の預金は減ったことになります。
市中銀行が破産するとき
貸付金として預金通貨を創造できるので、銀行は中央銀行と同じように、決済マネー不足で破産することはないという人がいますが、それは違います。
A銀行の、不良債権(バッドローン)の多さから生じた信用不安から、引き出され送金されるマネーが超過を続ける場合、信用創造が間に合わず、つぶれます。
送金マネーの超過を続け、流入するマネーが少ない銀行は、銀行ネットワークから排除されたことになるのです。
今回はいったんここまでです。次回は、日本経済の懸案になってきた中央銀行のマネー創造の能力に限界はあるのか?限界があるとすれば、何が原因で限界になるのかを、理論的に検討します。
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2016年8月10日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2016年8月10日号)より一部抜粋、再構成
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