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安倍マリオ「東京オリンピックへの危険なBダッシュ」3つの落とし穴=斎藤満

「ヘリコプター・マネー」が日本にもたらす悲劇

一例として、市中銀行からの買い入れの形をとりながら、その売却など「出口策」を封印し、政府の返済負担を軽減する形で財政資金を供給することはできます。

例えば、40年満期の国債を発行するようですが、日銀がこれを買い取り、途中で売却しなければ、政府はほとんど返済負担なしに資金調達してお金を使えます。これは事実上のヘリ・マネと言わざるを得ません。

ヘリ・マネは、2つのルートからインフレを引き起こします。

1つは、商品券や各種給付金などの形でお金をばら撒く一方で、それらが支出に回らないと、需要を超えたお金の余剰散布となり、お金の価値がそれだけ低下します。つまり、1万円の価値が8千円になれば、企業は1万円をそのまま受け取れず、1万2千円に値上げして目減り分をカバーし、それだけインフレになります。

もう1つのルートは、供給力が限られる中でオリンピック需要や新幹線工事を前倒しで進めると、供給力不足でボトルネックが発生し、資材や一部の人件費が暴騰して、ボトルネック・インフレが起こります。

多くの労働者の賃金は上がらないまま、インフレが進むので、個人はインフレで購買力や金融資産の価値が低下し、強制的な増税と同じ負担が生じます。当然政府に対する国民の反発が高まります。

金融政策の限界に気づいた政府は、すでに財政にシフトしています。先に28兆円余りの経済対策を打ち出しました。しかし、ロイター通信が大手企業400社を対象に行った調査によると、その効果について「かなりある」とする企業は3%にすぎず、「少しはある」が63%、「あまりない」が31%もありました。消費の喚起や潜在成長率押し上げ効果については、半分以上が否定的でした。

個別意見としても、サービス業からは「インフレは年金生活者だけでなく、誰も望んでいない」、不動産業からは「不動産市場はすでに異常な状況で、経験値からは考えられないほど価格が上昇していて怖い」との意見が出ています。

ブラジル・リオで、五輪に巨費を投じるくらいなら、国民の給与支払いに回せと、政府への批判が強まりましたが、日本でも、さらなる大規模な財政支出をすることに懸念の声が上がっているのです。

人口が減少し、国内需要が減少することが見えている中で、企業は国内投資には慎重です。

供給力が限られているところに、将来の需要を先取りして使ってしまうと、オリンピック前にはインフレに、オリンピック後には反動の不況、デフレとなり、経済の振幅が無用に拡大し、経済を不安定にします。

前回、1965年東京五輪の後も「昭和40年不況」を招き、大手証券の経営危機を招きました。

この財政支出の拡大に対して、その財政資金手当てで国民の資金を吸い上げたくないとすれば、結局は日銀にお金を刷らせることになり、政府も暗黙のうちに「ヘリ・マネ」に期待することになると見られます。

その日銀はインフレで金利が上昇すると、大量に保有する国債の値下がりで損失が拡大し、債務超過になる懸念があります。

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