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安倍マリオ「東京オリンピックへの危険なBダッシュ」3つの落とし穴=斎藤満

「中国人民解放軍の暴走」リスクに現実味

それと関連して(2)中国リスクも、これまでになく高まってきます。

米国の次期大統領がどちらに転んでも「反中国」の色合いが強くなる一方、中国はと言えば、習近平体制が揺らぎつつあり、焦りの色が伺えます。政権が追い込まれると、予想外の「暴発」が起こるリスクが高まります。中国が国際的に孤立化すれば、余計その面が強まるのです。

中国は南シナ海での埋め立て、軍事基地化を強行して国際世論の反発を強め、すでにハーグの国際仲裁裁判所から、中国の南シナ海での権利を否定されています。

中国はこの判決を無力化するために、フィリピンなどと個別交渉に入り、より有利な展開を模索するとともに、ハーグ判決に同調する日本を、東シナ海での公船侵入などでけん制しています。

国内が安定しているときはさほど心配はいらないのですが、現在は中国経済の不良債権、過剰債務、過剰設備の調整が困難を極め、失業の不安が高まる中で、来年の共産党大会を控えています。

習近平国家主席は、反対勢力の追い落としで体制強化を進めたいのですが、これに対する反発が北京の共青団上海の江沢民派からも出ているようです。

経済的にも政治的にも不安定で国内の緊張が高まる中国が、国際的にも孤立化し、米国がより強硬な姿勢に出ると、習近平体制はより窮地に追いやられます。

国民の不満を吸収するために、日本がスケープゴートとして利用されるリスクもあり、日本がその対応を誤ると、中国軍の暴発リスクも高まります。米国の睨みがきかなくなれば、なおさらです。

アベノミクスの行き詰まり

そして国内の難関は、(3)アベノミクスの行き詰まりが露呈しつつあることです。無理をすれば、それだけコストがかかるばかりか、矛盾、副作用が大きくなって国民の反発を高めます。その前兆がすでに金融政策に表れています。

黒田日銀総裁は、7月29日の政策決定会合で、ETF(上場投信)の買い入れを倍増する追加策を打ち出すとともに、次回会合で政策の「総括的検証」をすると言いました。

これは、これまで異次元緩和やマイナス金利といった大規模な金融政策を打ってきたのに、なぜ物価目標が達成できないのかを検証し、新たな対応策を導き出そうというものです。

言い換えれば、これまでの緩和策は、インフレ率の2%への引き上げや、これを可能にするだけの経済の拡大に効果がなかったことを認めたようなもので、なぜ効果が出なかったのか、何が悪かったのかを検証し、より早い時期に物価目標を達成できる方策を打ち出したい、と言っています。

そもそも、誰も望んでいない2%のインフレを実現すること自体の是非が問われるべきですが、これは政府との決め事でもあり、否定するわけにいかないので、何が何でもこれを可能にする策を導き出したいはず。

ところが、これだけの規模で、およそ考えられるすべての手を尽くしたのに効果が出ないということは、これをさらに強化してもダメということになります。

まじめに、真摯に分析すれば、金融政策だけでは限界があるという結論になると思いますが、日銀としては自ら「効果がない」とは認められません。日銀を背後で操る国際金融資本も許してくれないでしょう。

そうなると、危険ドラッグともいうべき「禁じ手」、財政ファイナンスによる「ヘリコプター・マネー」に走らざるを得なくなります。

もちろん、これが禁じ手であり、法的にも認められないことは知られているだけに、黒田総裁も、表向きは「財政と一体化するという意味でのヘリ・マネは禁じられている」と言っています。

しかし、日銀による国債の直接引き受けに抵触しない範囲で、限りなくこれに近いやり方をしてくる「知恵」を働かせる可能性があるのです。

Next: 出口なしの片道特攻「ヘリコプター・マネー断行」ステージ

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