第2の障害 政府・財務省との主従関係
第2の障害は政府との関係です。20年前の日銀法改正で、形の上では日銀の独立性が高まったことになったのですが、現実は「政府、財務省の一部局」から脱却できていません。
財務省幹部には今でも「金融政策は我々が決めている」と言ってはばからない人がいます。そもそも、日銀の正副総裁はもちろん、審議委員も政府の指名人事となっています。
実際、現在日銀が進めているマイナス金利付きQQEは、「アベノミクス」の重要な部分として位置づけられています。安倍政権が2%の物価目標達成を求めれば、日銀としてもこれを拒めない立場にあります。
そして今、財政金融の協調を求められています。物価目標の取り下げや国債買い入れ額の圧縮を安倍政権が認めるとは思えません。
第3の障害 日銀の面子
そして第3の障害は、日銀の面子です。これが厄介です。
欧米の中央銀行関係者からは、「金融政策だけでは限界がある」との認識が示され、それゆえに構造改革や財政政策も必要と言います。
しかし、日銀はまだ金融政策は有効で、景気も物価も押し上げられると考えています。異次元緩和からすでに3年半が経ちますが、目標達成はまだ見えません。
もともと金融政策には引き締めは効いても、緩和策はなかなか効かない「非対称性」があります。
特に、風がないと凧が揚がらないように、経済に推進力という風が吹いていないと、緩和策も効きません。いったん止まってしまった車は、ブレーキ・ペダルから足を離しても動きません。バブル後の日本は風がやんでしまい、推進力を失いました。
それでも2005年当時のように、日本に風がなくとも、世界に風が吹いていれば、金融緩和による円安で海外需要を手にすることはでき、一時的に景気浮揚もできました。
しかし、昨今のように世界経済にも風がなくなると、円安で需要をとってくることもできません。ここではM.フリードマン先生やバーナンキ流でも凧は揚がりません。
にもかかわらず、国際資本も市場も、日銀が十分な緩和をしていないからデフレになる、として、勝手に日本をデフレとしたうえに、それを日銀のせいにしました。
そこで政府や国際金融資本のメガネにかなった黒田チームをつくり、「異次元緩和」をさせました。大規模に量を拡大すれば、物価も名目GDPを高めることもできる、との考えのもとにです。
そこでは原油安も人口減少も賃金の低下も関係ない、マネタリー・ベースを何拾兆円も増やしさえすればよく、物価は2年で2%に引き上げられる、この異次元緩和だけで十分で、追加策も他の策も必要ないと豪語していました。