アルゴではない人間の限界とは?
実際にこの手法は、コンピューター・アルゴリズムによる超高速取引をおこなうHFT(High-Frequency Trade、高頻度取引)業者やヘッジファンドなどで比較的よく行われている手法だと思います。
たとえば「世界一のファンドマネジャー」とも評されるジェイムズ・シモンズが創設したルネッサンス・テクノロジーズは、徹底した秘密主義で詳しい運用手法が分からないのですが、リーマンショック後の議会証言でシモンズ自身が「どちらかというとコントラリアン的」と説明しています。
だからといって一般の投資家がそれに倣えばいいというものでもありません。
コントラリアンでは、ただでさえ難しい損切のタイミングがより難しくなります。というのも、損切後に相場が反転する可能性は常にあるわけですから、相場反転を狙うコントラリアンをやっていると損切に踏ん切りがつきにくいのです。
それでも「一気に持っていかれない」ようにする必要があり、そのためには常に幅広く市場をウォッチし、わずかな異変を感じ取ったら躊躇することなく機敏にポジションを閉じなければなりません。
これは、機械は得意かもしれませんが、人が苦手とするところのものです。
“安易なコントラリアン”が招く大きな危険
前項で見たように、コントラリアンは、有効な投資戦略となりうるものですが、同時に大きな危険が伴います。
とくに一般投資家が陥りやすい“安易なコントラリアン”は、多くの投資家にとって長期的な成功を阻む大きな壁となっているのではないかと思います。
コントラリアンは、ある意味で心地よいやり方なのです。
人は、株価が少し上がると割高に感じ、少し下がると割安に感じます。だから、コントラリアン的な行動をとりたくなります。でも、相場の変動は、多くの人がそのように感じる価格レンジよりもはるかに大きく動くことが普通です。
人の事前予想は、いつも現状維持的で、せせこましくて、大胆さに欠けるのです。それに対して、現実の相場はもっとダイナミックに動きます。
つまり、自然に感じるがままに相場を捉えていると、いつも価格変動の大きさを過小評価してしまうことになります。
平穏な相場環境でコントラリアンが比較的高い勝率を残すことも、実は大きな危険を生みます。
こうした平穏時の勝率の高さも居心地のよさを醸し出すものです。でも、それに浸っていると、相場環境がガラッと変わったときに一気にうまくいかなくなって、パニックに陥りやすくなってしまいます。
また、「今回はたまたま市場がおかしな動きをしたから失敗しただけで、今までうまくいっていたのだからやり方に問題はない」と感じやすくなります。
でも、次に述べるように、こうした考え方こそがもっとも危険なことだと思います。