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親日家のジム・ロジャーズが「日本経済の破滅」を予想する最大の理由=東条雅彦

歴史上、政府は「r>g」の状況下で財政破綻を回避できない

2014年から2015年にかけて、トマ・ピケティの書籍『21世紀の資本』が世界的な論争を巻き起こし、一大ブームになりました。古代から現在まで統計データを集め、導き出した結論が「r(資本収益率)>g(経済成長率)」という1つの公式でした。

今までなんとなく、「労働者よりも資本家の方が儲かるのでは?」と感じていた命題を、統計的なデータを使って証明した功績は大きいでしょう。

実はこの公式「r>g」が、今の経済の構造的な問題をよく表しています。

「r>g」の意味を簡単に言うと、株価が上昇すれば投資家は儲けられるが、株式などの資産を持っていない人たちにとっては何の利益にもならない、ということです。

リストラを実施する」というニュースが流れると、労働者は職を失って、収入が減ってしまいます。一方で、「リストラ」のニュースを好感し企業の株価が上昇して、投資家(資本家)の収益は上昇していきます。

政府も、立場としては労働者と同じで、株価が上がっただけでは何の利益にもなりません。政府の収入源は「税収」のみであり、経済成長率(g)に依存しているからです。

21世紀に入って、先進各国が経済政策を実施しているのに、イマイチ景気が盛り上がらなくなってきました。日本では、バブルが崩壊した1990年前半以降、何をやってもダメでした。

そしてついに日銀は、「日経平均株価に連動するETFと不動産投資信託(J-REIT)を、それぞれ年間8兆円/900億円買い切る」という政策を実施し始めました。

このETF買い入れは、他国の中央銀行が一切手を出してこなかった「禁じ手」です。従来の「量的金融緩和」と区別するために、「質的金融緩和」と呼ばれているものです。しかしそんな禁じ手を使っても、名目GDPはそれほど上昇していません

<日経平均株価(年次)>

2012年 10,395円
2013年 16,291円 (前年比 +56.7%)←アベノミクス開始
2014年 17,450円 (前年比 +7.1%)
2015年 19,033円 (前年比 +9.0%)
2016年 18,426円 (前年比 +3.1%)

<日本 名目GDP/名目経済成長率>

2012年 475.3兆円
2013年 479.0兆円 / +0.7%
2014年 486.8兆円 / +1.6%
2015年 499.2兆円 / +2.5%
2016年 504.9兆円 / +1.1%

<日本政府 一般会計税収の推移>

2012年 43.9兆円
2013年 47.0兆円 (前年比 +7.0%増)
2014年 54.0兆円 (前年比 +14.8%増)
2015年 56.4兆円 (前年比 +4.4%増)
2016年 57.6兆円 (前年比 +2.1%増)

質的金融緩和により、アベノミクスの初動では日経平均株価が56.7%も上昇しました。その翌年の2014年の税収は47.0兆円から54.0兆円に増えましたが(14.8%増)、「r>g」であることには変わりがないのです。

Next: ジム・ロジャーズが語った「不都合な事実」

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