格差が生まれるのは当然のこと
ピケティ氏の結論とは、「資本による収益の伸び率が、労働収入の伸び率を常に上回っている」というものです。氏はこの結論に異を唱えているわけではなく、むしろ「経済学上、当然のことだ」と言っています。
拡大し続ける富の格差に対して氏が提案した解決策とは「国際的な連携による税包囲網と、富裕層に対する累進課税」です。
冒頭で税金の話をしたことを再度、思い出してください。実は、ピケティ氏が強調するまでもなく、世界はまさに氏が言った方向に進んでいます。
私たちは現在、「今の世の中は窮屈だ」と思って生活していますが、それは私たちが「持っているから」です。つまり“富裕層への課税”とは、「自分とはまったく関係のない大金持ちから取り上げる」という意味ではありません。「富裕層に対する課税=持っているところから取る」ということなのです。
【広がり続ける格差の中で、自分自身の身を守る方法】
ピケティ氏は研究者ですから「私たち一人一人が、この現実にどう対処すればいいのか?」までは教えてくれません。答えを知るには、氏の挙げた資本収益と労働収入のそれぞれのメリット・デメリットを比べてみることです。
まずは資本収益(投資)についてですが、メリットは先ほども言った通り、「利益が利益を生む」ことです。しかし資本収益にもデメリットがあり、それは「投資に失敗すればお金が返ってこない」ということです。失敗しないためには、成功する銘柄を見抜く目が必要となります。けれど、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏ですら度々、失敗しているくらいですから、簡単なことではありません。
よって、プロでもない限り、最初からいきなり良い銘柄を見抜くのは難しいでしょう。オススメは、その道のプロからアドバイスを受けることです。ただし、ここでご注意いただきたいのが「他人にお願いするには自分がある程度、内容を理解している必要がある」ということです。つまり勉強が必要になります。あなたはそれをご存じだからこそ、こうして今、本稿をお読みになっているわけです。
続いては労働収入についてです。これをお読みの大部分の方が、労働収入で生計を立てていることと思います。労働収入には「そのままでは増えていかない」というデメリットがあるとお話しましたが、無論、メリットもあります。それは「自分のお金をリスクにさらさずに済む」ということです。一部の職種を除いて、労働者は仕入れや設備投資をせずとも収入を得ることが可能です。「元手がいらない」というのが労働収入の最大のメリットなのです。
とはいえ、先ほどお話したように「自らがコストになっている」状態では、収入は増えていきません。だからもっとも望ましいのは、まずは労働収入を貯めて元手をつくり、それを使って「他人がつくった仕組みにお金を投じる(投資)」か、「自らお金を生み出す仕組みをつくる(事業)」ことを考えていくことです。
これを図解にすると、以下のようになります。これが格差是正のための答えであり、「自分で自分の身を守る」ことでもあるのです。
《格差是正のためのステップ図解》
/ 投資→→→→ 老後資金の準備(万一の備え)
労働収入(貯蓄)→ ↓ (資金の一部を充てる)
\ 副業(実験)→ 独立起業(お金を生み出す仕組み作り)
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