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安倍政権は「国難突破」できない。同一労働同一賃金、働き方改革に人づくり革命――全てが矛盾だらけ【大前研一「2018年の世界」(3)】

「同一労働同一賃金」はボーダレス経済では無意味

「働き方改革」1つ取り上げても政府の真意が不明なことばかりです(図-23左)。

安倍首相が繰り返し演説していた「同一労働同一賃金」ですが、これは閉鎖国家では成り立ちます。しかしボーダレス経済においては、同じ労働ができたら同じ賃金だとするのならば、日本の労働者の賃金も海外、例えばベトナムで同じ労働をしている人と同じでもよいということになるのです。

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したがって、多くの財界人は、大手町にいるときには安倍首相に「イエッサー」と言いながら、ベトナムと中国への発注を増やすという見事な二枚舌を使い分けることになります。

しかしそれは咎められるべきことではなく、経営者としては当然の選択であり、安倍内閣はボーダレス経済のボの字も分かっていないのです。同じことができるなら同じ給料にせよと号令をかければ、日本の中だけでやりくりしてくれると思っているのです。

かたや企業は、今一番安くこの仕事ができるところはどこかと立地場所を考えます。「同一労働同一賃金」などという危険な言葉を平気で言えるのは、経済そのものが分かっていないからなのです。

企業が自由に解雇できないという“雇用の膠着化”

安倍内閣が掲げる生産性革命、正規社員化促進ですが、日本の生産性が低い最大の理由は間接人員の業務が非効率だということです。

ホワイトカラーの業務において間接業務の効率化を図るとなると、ICTの駆使やAI利用によるロボット化を行うことになり、これは大量のホワイトカラーの失業につながります。しかし、日本は今、世界で最も解雇ができない国なのです。

これはかなりシリアスな問題です。かつてはドイツやスウェーデンがそうでしたが、ドイツでは2003年にドイツ社会民主党のシュレーダー首相(当時)の下で、労働市場改革と社会保障改革による構造改革プログラム「アジェンダ2010」を提案・断行し、労働コストを大幅に削減しました。

これによりドイツの企業においては解雇の裁量が広がったのです。もう要らない人は外に出してください、国のほうで再教育をします、それであなたがたは企業としての競争力を維持してください、これがドイツの競争力が回復した最大の理由です。

ところが日本のほうは逆に、正規雇用と非正規雇用があったら「非正規という言葉をこの国から一掃する」と安倍首相が言うのです。そんな余計なことをやるならば正規雇用の人を解雇しやすくする方法を考えていただきたいのですが、今の日本はこれができません。

日本という国はいったん正社員に採用したらなかなか解雇できない国です。そしてまた、入社後に再教育するという意識がありません。大学を卒業したらそのまま一生それで食べていくと思っている人がほとんどです。

OECDの中で最も再教育比率が低いのが日本です。ようやく政府もリカレント教育というものをやり始めましたが、定年退職者や出産等で退職した女性などが対象だと言うのですから、全くもってリカレントではありません。

世界中のリカレント教育は、大学を卒業してから15~20年でもう1回勉強し直して、新しいスキルを身に付けるというものです。

日本の場合はそれどころか、大学に行ってみれば高齢の先生が昔と同じことを教えています。安倍政権のやっていることは全方位的に雇用の膠着化に向かうものでしかありません。

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