中国は「大豆、自動車、航空機」までも対象に。しかし…
もっとも、今回市場が驚いたのは、中国が米国からの主要輸入品である大豆、自動車、航空機を対象としたことです。
関税の上乗せは輸入価格の上昇を招き、中国の消費者に与える影響も大きいといえます。特に大豆は、米国産の代替品をすぐに探すのは困難です。それでも今回は強硬策に踏み切った格好です。
しかし、これも所詮はポーズです。
中国商務省は「米国が国際的な義務に違反したことで中国は緊急事態に陥った」と強く非難し、中国の利益を守るため、中国対外貿易法や国際法の原則などに従い、報復措置を決めたとしています。
表向きは、当然このような発言になります。
一方、大豆については、米国も困ります。大豆は対中輸出が多く、米大豆業界からは「経済的な危機にさらされる」などとの指摘があります。
米国内では昨年秋から一連の対中措置を見越して鉄鋼価格が上昇しており、既に米中貿易戦争になっているとの指摘もあります。
米中間の報復合戦がエスカレートすれば、日本を含めた世界各国の貿易などにも悪影響が及ぶ可能性があります。
米中貿易摩擦を背景に金融市場が混乱すれば、順調な回復基調をたどる世界経済にも影響が出る可能性があります。
なぜ中国は強硬姿勢に出たのか?
中国はトランプ政権発足後、貿易問題では一貫して低姿勢の対応を続けてきました。しかし、トランプ大統領が制裁の具体的な動きを見せると、一気に強硬姿勢に転じています。
一方で、北朝鮮との首脳会談実現で米中の力関係に変化が生じた可能性があり、中国は自国が優位になったと感じているとの論評も聞かれます。
その結果、米国に対して一歩も引かず、強硬姿勢に出たとの考え方です。
確かに、中国が強気なのは、習近平政権が2期目に入り、権力基盤を極めて強固にしたことに加え、3月下旬に北京で習国家主席が金正恩朝鮮労働党委員長と会談したことは、その背景にあるのかもしれません。
この会談で、中国は「北朝鮮カード」を手にし、トランプ大統領の強引な手法に付き合う必要性が薄れたとみられています。
さらに、北京の外交関係者は「北朝鮮問題と米中貿易摩擦はワンセットだ」としています。
それだけ、中国は北朝鮮問題では、自国が強い立場にあると勝手に考えていることになります。そして、5月末までに開かれる米朝首脳会談に向けて、北朝鮮カードを握っておきたい思惑が透けて見えます。
その一方で、中国は北朝鮮問題の進展を見極めながら、米国と水面下で通商交渉を続ける見通しです。
表層的にはそのような見方になるのでしょうが、実態は違います。
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