北の新スローガンは「経済建設に総力を集中」
一方で、金正恩委員長は今回の総会で、13年から続く政権の基本指針である「核開発と経済再建の並進路線」の看板も下ろし、「経済建設に総力を集中」という新たなスローガンを掲げました。それが、前述した「社会主義国の建設」です。
今回の発表で、並進路線が確立できる体制になったと金正恩委員長は判断し、これまで核・ミサイル開発に集中さていた国防予算を経済に回すことで、新しい国家の建設に向かうことができると判断したわけです。
そのためには、国際社会と連携していないと、とても目標は達成できません。そこで、並進路線を打ち切り、国際社会の要請に従う形を取ろうとしているわけです。
米国、韓国などとの対話路線を見せているのは、今後の国家の方向性を明確にするうえで重要と判断したからにほかなりません。
金正恩の評価が高まっている
一方、海外ではこれを評価する声が多く聞かれます。
中国外務省の陸慷報道局長は、今回の北朝鮮による核実験やICBM試射中止などの決定を受けて談話を発表し、「歓迎を表明する」と高く評価しています。さらに、朝鮮労働党が経済発展に注力し、国民の生活水準を高める方針を掲げたことも併せて歓迎しています。
今回の決定は「朝鮮半島情勢のさらなる緊張緩和、非核化と政治解決プロセスの推進に役立つ」とし、「半島非核化と地域の恒久平和実現は、半島・地域の国民の共同利益に合致し、国際社会にとっての共通の期待でもある」としました。
ちなみに、習近平国家主席が6月中に北朝鮮を訪れる案が浮上しているようです。
中国側は「われわれは北朝鮮とのハイレベル交流を維持・強化したい」としており、早期訪朝に前向きなようです。
日本側の本音は「口だけでは何とも言えない」
一方、安倍首相は今回の北朝鮮の決定を「前向きな動きと歓迎したい」としました。
その上で「この動きが核、大量破壊兵器、ミサイルの完全、検証可能、不可逆的な廃棄につながるかどうか、しっかり注視したい」とし、北朝鮮に具体的な行動を求めました。
安倍首相は今後の対応に関して「既に日米首脳会談で北朝鮮の変化にどう取り組むか、しっかり打ち合わせは終わっている。それに従って日米、日米韓で対応したい」としています。先の日米首脳会談では、この点についてかなり話し込んだことを示唆しています。
しかし、賢い小野寺防衛相は、重要なポイントを見逃していません。つまり、「今回の北朝鮮の決定では、中・短距離の弾道ミサイルの放棄は触れていないし、核の放棄にも触れていない。これでは不十分だ」としています。
さらに「現段階で圧力を緩めるタイミングではない。引き続き最大限の圧力を加え、核・ミサイルの放棄を目指す姿勢に変わりはない」としています。
また、麻生副総理兼財務相は「北朝鮮はこれまで数々約束したが、核・ミサイル開発はそのまま続いた。口だけの話では何とも言えない」としています。
これが日本サイドから見た本音でしょう。
しかし、これまでミサイルを打たせていたのは、実は日本です。ほぼ時効ですからいいでしょう。詳しくは、いずれ詳細をお話しすることにします。
ちなみに、北朝鮮のミサイル発射の技術者はロシア人、燃料は中国からのものでした。北朝鮮にはそこまでの技術はなかったのです。これも重要なポイントです。
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