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中韓に周回遅れ。日本はプライドを捨てQR決済でキャッシュレス化を目指せ=岩田昭男

5億2千万人が利用する「アリペイ」

日本企業の手本になっているQRコード決済の雄、「アリペイ」を少しみてみましょう。

アリペイは、中国の巨大IT企業のアリババグループの子会社が開発した決済ツールです。グループ内のネットショッピングモール「タオバオワン(淘宝网)」での決済に利用してもらう目的で作られました。

その原型になったのが、Googleが作ったPayPalです。これは、基本的には送金のためのツールです。

しかし今や、アリペイがPayPalをきれいに抜き去りました。2004年12月にアリペイがスタートしてから13年が経過し、加入者数は5億2千万人とケタ外れの数になっています。

名実ともに、中国を代表する決済ツールに育ったと言えるでしょう。

徹底した「消費者第一主義」

この人気の秘密は何かというと、ズバリ消費者第一主義を掲げたことにあります。

中国では、国家がQRコード決済を強力に推進し、QRコード決済を軸にエコシステムが作られています。そしてアリペイには、ユーザー特典が数多く用意されており、まさに「消費者のため」というサービスがずらりと並んでいます。

アリペイのアプリは「生活アプリ」と呼ばれ、いろいろなシーンで使えるようになっています。タクシーやホテル予約、映画チケットの購入、公共料金の支払い、病院の予約、振込みや資産運用商品の購入まで、1つのアプリから直接行うことが可能となっています。

特に評判なのが、金融部門です。アリペイが提供する預金サービスは高金利で有名で、申込者が殺到したために最近は抽選になったといわれています。逆にローンを利用しようとすると、市中金利よりかなり低くてこちらも使いやすい。さらに投資信託も有利に使えるようになっています。

もともとネットショッピングのために開発されたツールですから、消費者保護も徹底しています。

ネットでの買い物でのトラブルはお金を払ったのに商品が届かないというケースが多いのですが、アリペイの場合は商品が届いてから確認をした後で引き落としが行われるので、トラブルは少ないといいます。

その他にも、都市部で乗り捨てが可能な自転車シェアサービスmobikeやofoを活用の際、アリペイかそのライバルであるWeChat PayでQRコードを読み込むことによって解錠し、近くにある自転車を検索することも容易にできます。まさに生活のためのツールとなっています。

信用力を計る「独自スコア」を提供

もう1つの特徴は、「芝麻(ごま)信用」です。これはアリペイの利用履歴を参考にして作られる信用偏差値のことです。

利用金額の支払いがスムーズだったかどうか、毎月一定以上のお金を使っているかどうかなどで、点数が決まります。さらにタオバオワンでの取引マナーが良かったかどうか、シェアサイクルをきちんと返却しているかどうかなどを基準にスコアリングされ、毎月の偏差値に反映されます。

政府も公の信用数値を提供しており、アリペイではそれらも加味されますから、年々偏差値の精度は上がり、今ではかなり信頼性の高いものになっているようです。

公共料金の支払い実績などで利用者の信用スコアを蓄積し、一定基準を超えると金利優遇などの特典を受け取ることができます。

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