企業活動にブレーキがかかる
貿易戦争の行方は予断を許さないが、投資家にとって重要なことは、公表された6月のFOMC議事録で指摘されていたように、「貿易政策を巡る不透明感から、新規投資計画を縮小または棚上げする企業もあった」ことである。
足元で重要なことは、貿易摩擦の行く末を論じることよりも、貿易戦争に伴う不透明感が企業活動にブレーキにかけるということだ。
「利上げ」路線に変化の兆しか
こうしたFRBが懸念している動きは株式市場にはあまり反映されなかったが、債券市場にはイールドカーブのフラットニング化という形で現れている。
FRBが物価の指標としているPCEコア物価指数が前年比で2%に達し、パウエル議長も「雇用の力強さが増して経済活動も底堅く拡大している」「段階的な利上げが理に適っている」と景気動向や利上げ路線に自信を見せる中で、10年国債と2年国債の利回り格差は0.28%台と2007年8月以来の低水準まで縮小してきた。
FRBが年内あと2回の利上げする姿勢を見せている中でイールドスプレッドが0.28%台まで低下したことで、逆イールドが現実味を帯びてきた。
10年国債の利回りがこのまま上昇しないとすると、FRBがあと2回利上げをすると逆イールドになってしまう。逆イールド化が起きると景気後退入りするという現象が、少なくとも1975年以降は続いていることが指摘されており、今後の利上げ路線に変化が出て来る可能性は否定できない。
債券市場から米経済が崩れ始める
イールドカーブのフラットニング化については6月のFOMCでも議論され、「一部の出席者は、それら(債券買い入れ政策などの)要因が将来の経済活動を占う指標としてのイールドカーブの傾きの信頼性に響く可能性がある」との指摘があったことが報告されている。
イールドカーブが将来の経済活動を占う指標としての信頼性を失っているとしても、現実として世の中はイールドカーブに反応して動くことになる。
物価が目標に到達する前から利上げ路線をとってきたFRBにとって、イールドカーブが必要以上にフラットニング化することは悩ましいものである。
特に、10年を超える超長期国債のフラットニング化は頭痛の種のはずである。10年国債までとそれ以上の超長期国債とでは流動性に大きな差があるため、通常10年以上のイールドカーブの傾斜は10年までのそれよりも大きくなる。
しかし、この1年間で10年超国債のイールドカーブは極端にフラットニング化してしまった。足元の30年債の利回りは2.931%と3%を割れて来ており、2.824%の10年国債との利回り格差は0.1%強にまで縮まってしまっている。
ゼロ金利政策を続けている日本ですら、30年債と10年国債の利回り格差は0.65%程度あることと比較しても、米国のイールドカーブのフラットニング化の異常さは明らかである。