ブロックチェーンの製造業における適用は、現代の社会に革命的な転換をもたらす起爆剤になるかもしれない。投資対象にもなる有望プロジェクトとともに解説する。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2018年8月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。6月19日配信された続編「ゴールドとリンクした仮想通貨のプロジェクトを一挙に紹介」もすぐ読めます。
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製造業が変われば世界が変わる
ブロックチェーンの製造業における適用は、現代の社会に革命的な転換をもたらす起爆剤になるかもしれない。
一口に製造業といっても、自動車、家電、IT機器、重電、造船、飛行機などあらゆる産業が存在する広大な領域である。これを製造業としてひとくくりにすることには無理があるかもしれない。
しかし、こうしたあらゆる分野でブロックチェーンの適用を促進させる共通した特徴があることも事実である。そこで今回は、そうした基礎的な特徴を明確にするために、製造業をひとくくりのカテゴリーとして扱いながら、ブロックチェーンがもたらした革命について解説したい。
それがどれほどの革命なのかを具体的にイメージするためには、製造業の歴史的な変遷を簡単に見ておいたほうがよいだろう。
製造業の変遷
<1920年代から30年代の勃興期>
現代の製造業が勃興したのは、1920年代から30年代のアメリカにおける自動車や家電などの耐久消費材産業の発展からだった。製造工程を徹底して効率化したベルトコンベイヤー方式や、労働者の作業動作をマニュアル化したテイラー方式などを大胆に導入した近代的工場が建設された。
しかし、この勃興期には膨大な数の部品や製造工程で使う工具など、製品の製造に必要となる要素は、すべて同じ工場の敷地内に配置された本社工場で生産されていた。ベルトコンベイヤー方式などの導入によって生産の効率性は画期的に上昇したものの、これがネックになり製品コストの低下には限界があった。
<1950年代から80年代>
この生産要素の本社工場の管理という限界を突破し、耐久消費材の大幅なコストダウンに成功したのが、戦後の日本であった。日本は工具や部品など、製品の生産に必要なすべての要素を外部の企業に委託した。こうした企業は下請けとして本社を中心に系列化した。本社は系列企業に安定した受注を保証する代りに、徹底したコストダウンを要求した。
この結果、当時の日本の労働賃金の相対的な安さも背景となり、製品の画期的なコストダウンに成功した。日本製の耐久消費材は世界市場を席巻し、文字通り、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代を迎えた。
<1990年代から現代まで>
しかし、1990年代になると日本の一人勝ちのこの状況に変化が生じた。1989年の天安門事件までは日本型の国家主導の管理型資本主義を目指していた中国は、天安門事件の人権侵害に対する欧米各国の経済制裁で没落し、制裁が解除された91年からは、国内の安い労働力を外資系に開放し、経済成長を追求するモデルを採用した。
また、94年頃からインターネットが拡大し、本社と海外に展開した生産拠点がリアルタイムで結ばれる状況になった。これにより、サプライチェーンのさまざまな要素を、コスト的にもっとも安い世界の地域に配置することができるようになった。労働力の安さから、中国に世界の製造業企業の生産拠点が集中した。
この結果、製造業全体の製品コストが極端に低くなった。国内の系列下請け生産を抜け出すことができず、グローバル化に失敗した日本の製造業は低迷した。
サプライチェーンマネージメント(SCM)の発展
このような製造業のグローバルな生産体制をベースに発展したのが、サプライチェーン・マネージメント(SCM)である。SCMとは生産者から最終消費者までの製品の流れを統合的に見直し、業務プロセス全体の最適化と効率化を図るための経営管理手法だ。SCMを実現するための有効な手段として、SCMシステムなどが提供されている。
身近にある具体的な例では、小売店などでのPOS入力や営業担当者からの販売・受注実績をもとに需要予測を行い、それを基礎に発注、生産、販売、出荷、物流などを最適な状態に調整する戦略がある。これを行うとその時々の需要変動に合致した製品の生産が可能になるので、小売が過剰在庫を抱える必要性がなくなる。
現金化されない在庫の存在は、企業の経営を圧迫する大きな要因のひとつである。在庫を保管するための倉庫の維持費や、その管理に必要な要員の人件費などは、どんな製造業にとっても大きな負担だ。特に、生産拠点が世界のさまざまな地域に分散し、グローバルな市場で販売している企業では、それぞれ異なった地域の需要変動に合わせて在庫を準備しなければならなくなる。
そのような状況では、仕入れから在庫管理、製造から販売、出荷から物流といった業務プロセス全体を最適な状態に管理できるSCMは大きな力を発揮し、製品コストの引き下げて、国際的な競争力を増強する切り札となっている。自動車など一部を除き、日本の製造業はSCMの導入に遅れているが、欧米や中国の製造業はSCMを大胆に導入し、大きな成果を上げている。