ブロックチェーン導入の難しさと問題点
このように、製造業全般のSCMにおけるブロックチェーンに導入は革命的な効果をもたらすことが期待できる。今後5年で導入は大幅に進むとも予想されている。しかし、ブロックチェーンの導入に関係する製造業特有の問題点と困難性もあることも事実だ。
すでにグローバル化したサプライチェーンを持つ製造業の分野では、大企業を中心に中央集権的なサーバが管理するSCMが導入されている。これが非常に複雑な製造業のサプライチェーンを管理しており、大きな問題はいまのところ発生していない。
そうした状況では、ブロックチェーンによるSCMの効果が認識されていても、既存のシステムをこれに積極的に変更したいという動機は起こらない。特に、既存のSCMで多くの人々の雇用が確保されている状況であれば、反発は避けることはできない。
さらに、中央集権的なサーバに比べると、複数のコンピューターが管理する分散台帳のブロックチェーンのシステムはどうしても処理に時間がかかり、遅くなってしまう。これも導入に踏み切れない原因となる。
しかし、こうした問題点と困難性にもかかわらず、2025年前後をメドに製造業の各分野へのブロックチェーンを基礎にしたSCMの導入は進むと見られている。2015年に「世界経済フォーラム」は、2025年には製造業におけるブロックチェーンは200兆ドルになり、世界のGDPの10%を占めるほどに成長するとしている。今後の発展に期待できる。
投資対象にもなる注目プロジェクト
このような状況で、すでにいくつかのプロジェクトが稼働しており、注目されている。それを以下に紹介する。
<シンファブ(SyncFab)>
・公式サイト:https://blockchain.syncfab.com/
・紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=YhdMCfSP4T8
・MFGの相場:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/syncfab/
ブロックチェーンを使って、バイヤーとハードウェア製造業者を直接繋ぐことで中間業者の排除を目標にしたプロジェクト。
ハードウェアの製造業で仲介業者やブローカーを排除できれば大幅なコストの削減が可能になる。バイヤーとハードウェアの製造業者を直接繋げ、さらに製造状況の追跡情報も提供する。また、シンファブが提供するスマートコントラクトを使って、注文や支払いのプロジェクトを自動化できる。
このようなプラットフォームの導入で、製造業者は製品の開発に専念できる環境が作られる。
<シール(SEAL)>
・公式サイト:https://seal.network/
・紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=kYL33CB3C2w
・SEALの相場:https://coinmarketcap.com/ja/currencies/seal-network/
特殊なチップを製品に埋め込むことで、ブランド製品の正当性を証明するプロジェクト。
ブランド製品の世界では、海賊製品や偽造が横行し大きな損失をもたらしている。しかし、ブランド製品の正当性を確実に証明することは難しい。
これを解決するのがシールである。シールはブランド製品にNFCチップを埋め込み、製品の情報をブロックチェーン上に記録することで、バイヤーや消費者がシールのアプリを使うと、ブランド製品の正当性を素早く確認できるシステムを提供する。
これで、所有権の移譲や盗難防止、保険などの活動に加え、ブランドのマーケティングキャンペーンや製品の分析など、製品に関連したあらゆる活動が実現可能になる。
またシールでは、ブランド製品の所有者が移転するたびに、ブランドメーカーに収益が入るシステムにもなっている。これによって、ブランド製品のメーカーは中古市場において、偽造品の流通を防ぎ、ブランドを保護しつつ、収益を得ることができるようになる。