現金が底をついたらアウト。デッドラインは目前に
久美子氏が犯したもう1つの間違いは、勝久氏との委任状争奪戦の過程で配当を2倍に引き上げたことです。これによって、毎年7.5億円の追加的なキャッシュアウトが発生することになりました。
今回の「継続企業の前提に関する注記」が記載される要因は、現金が底をつきそうなことです。6月末時点で残っている現金は22億円ですが、上半期だけで営業キャッシュフローが20億円のマイナスになっています。店舗や有価証券の売却、銀行借入により何とかしのいでいる状況です。
大塚家具はこれまで無借金経営を続けてきました。自己資本比率は60%と高く、一見健全な財務状況に見えます。
しかし、企業の財務を見る上で重要なのは、最終的には利益や自己資本比率ではなく、現金です。どれだけ利益が出ていて、どれだけ資本が厚かろうと、現金がなくなれば必要な支払いができなくなり、経営は破綻してしまいます。これが黒字倒産が起きる仕組みです。
逆に言えば、現金さえ確保できれば生き残ることができるのですが、これほどまでに経営状況が悪化した企業に多額の資金を提供してくれる銀行はなかなかないでしょう。現金がなくなってしまったら、経営は完全にアウトです。デッドラインは目前に迫っています。
もはや自力での再建は不可能に
引き上げた配当をすぐにでも下げていれば、もう少し資金に余裕があったかもしれません。問題の先延ばしにしかならないとは言え、現金はこの会社の生命線であり、それだけ久美子氏に危機感がなかったことが伺えます。
現金の流出が続き、リストラもできないとすれば、もはや自力での再建は客観的に不可能です。生き残るためには、身売りして外部の資本を入れてもらうしかありません。
目下、貸会議室のTKP<3940>や台湾企業の能率集団と提携交渉をしていると報道されています。知名度や流通ルートなどを利用してシナジーを出せれば、お互いにメリットになることもあるかもしれません。
しかし、そう簡単に出資してもらえるかというと、そうは問屋が卸さないと思います。
大塚家具の経営状況は日に日に悪化しています。それは、株価の推移にも表れています。
出資者の立場になって考えると、少しでも安い価格で会社を買えたほうがより有利に決まっているからです。
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