大きすぎる「固定費」が経営を圧迫
同社は丁寧な接客が売りで、勝久氏の時代には会員制を敷いていました。しかし、いくら素晴らしい店員がいても、来店する顧客が少なければ手が余ってしまいます。彼らの人件費は、確実に業績を圧迫します。
大規模店舗も重荷になりました。広すぎる店舗は、顧客が来なければただ家賃を払い続けるだけの金食い虫になってしまいます。単なる賃貸なら撤退すれば良いのですが、大塚家具はその大部分が解約不能の長期契約だったのです。
こうして、人件費と賃料などからなる固定費が経営を圧迫します。売上高販管費率は、ニトリが38.6%なのに対し、大塚家具は63.6%にのぼります。固定費がこれだけ高いと、いくら頑張ってもなかなか利益を出すのは難しいと言えます。
勝久氏が社長にとどまり、会員制を残していれば顧客離れも起きなかったかもしれません。しかし、それは問題の先送りにすぎず、遅かれ早かれ同じような状況に陥っていたと考えられます。
久美子氏に足りなかった「覚悟」
久美子氏が打ち出した戦略は、次世代店舗網の構築(専門店・小型店)、インターネットショッピングの強化、BtoBの強化、中古品の販売・レンタルなどでした。確かに、いずれも時代の流れを意識した戦略のように思えます。
しかし、本当に必要だったのは、紛れもなく人員削減を含むリストラでした。これがないことには、よほど急激に売り上げが伸びない限り、赤字を垂れ流し続けることは火を見るよりも明らかだったのです。
私も久美子氏の就任後に銀座の店舗を訪れましたが、日曜にもかかわらず店内はガラガラで、手持ち無沙汰の店員たちがおしゃべりをしていました。よほどの秘密がない限り、素人目に見ても「これでは駄目だ」と気づくのではないでしょうか。
もちろん、久美子氏もリストラが必要なことは認識していたのかもしれません。しかし、社長就任の経緯もあり、ここでリストラを行うと一気に人心が離れてしまう可能性があるほか、マスコミから何を言われるかわかりません。
それでも、リーダーは時に厳しい決断をしなければならない場面に直面します。久美子氏に必要だったのは、社員やマスコミから何と言われようと会社を立て直すという「覚悟」だったように思えます。きれいごとだけでは会社は経営できないのです。
一部報道によると、危機的な状況に陥った現在においても社長の地位に固執していると言います。もし本当にそうだとしたら、いまだに覚悟ができていない社長の姿は悲劇のヒロインにもなりません。