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米株が下がれば日本の年金は蒸発する~増え続ける世界の負債が経済をダメにする=吉田繁治

株式は劣後債の負債

株式は、株主による法人の所有権を示す金融資産です。金融資産になるのは市場で売れるからです。この株式は会社にとっては、返済の要らない劣後債の負債です。利払いは、株主からの配当要求分です。

株価が高くなると、高く買った株主は、大きな配当を要求します。これは銀行借入金の金利を、はるかに超える率です。株価には預金保険と日銀が保証している預金(銀行の負債)とは違い、下落のリスクがあるからです。

大きな配当をするには、会社のROE(資本利益率)が高い必要があります。株式は、会社の資本を株主から借りたものであるという認識をもつべきですが、この自覚がある経営者は、実に少ない。

一般に、自己資本という、まやかしの言葉を使っているからです。株主資本であり、会社の自己資本ではない。資本以外の利益準備金も、所有権は株主です。配当を、将来に猶予しているものが、企業が稼いだ利益準備金です。赤字のときの補填金になるので、準備金と言う。

米国株では、個人株主が50%、内外の金融機関・ファンドの持ち株が50%と推計されます。米国の株価が、仮に30%下がると、金融機関とファンド含む株主の金融資産が、「3740兆円×30%=1122兆円」減ってしまいます。

米国株が下がると、日本の年金が蒸発する

わが国の年金も、米国の株価が下がると、一挙に、「年金が消えた」という不安を、国民に引き起こすものになります。一定額を支給する公的年金(年間56.7兆円:2017年)は、国債で運用すべきであり、株のように、価格が大きく騰落するリスク資産での運用は、行ってはならない。

その騰落率は、30%以上になる時期もあるボラティティ部分です。日経平均(225種の株価の単純平均)のボラテリティは、現在は14.48%です。1年で14.48%下がる可能性が68%はあるという意味。14.48%上がる可能性も68%です(18年8月29日)。

※参考:https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201803_00.pdf(16ページの社会保障給付金の、年金と医療費の項)

しかしもう遅い。国債を日銀に売って、年金基金の50%のマネーで、日米の株を買ってしまったからです。

この問題は、麻生内閣時代の、支給漏れを起こした年金管理の不手際より、はるか大きい。年金問題をもっとも大きな原因として、自民党内閣が吹き飛んだことは、まだ記憶に新しい。その後の、民主党内閣は、2011年3.11の原発事故への対処で嘘を言って、転びました。首相は菅直人氏、官房長官が枝野幸男氏でした。
※参考:http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h29_q4.pdf

公的年金基金のように、大きな金額のポートフォリオ投資では、値動きが反対になるものに、分散投資しなければならない。ところが、米国株が上がれば日本株も上がります。米国株が下がるときは下がります。

年金基金のポートフォリオは、リスクを大きくしている運用であり、公的年金では決して行ってはならないものです。5年後には「なぜこんなことをしたのか」という、大きな責任問題になるでしょう。株価が下がると、年金が蒸発するからです。

年金だけじゃなく「財政全体」が危機に

日米の株価の下落により年金基金が減れば、政府は、もともと、34兆円が赤字の一般会計(2017年度)から、補填しなければならない。

34兆円の新規分の国債発行は、50兆円、60兆円、70兆円に増えて、金利が上がり、財政破産を促進する要素になって行くのです。

日本政府の財政は、金利の上昇だけではなく、日米の株価の下落に対して、耐性がなくなってしまったのです(筆者注:リーマン危機の時、世界の株価は約50%下がりました。これが、金融機関とファンドの資産縮小になったのです)。

Next: 株価と運命をともにする日本の年金。この先の株価は…

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