「ZOZOSUIT」の弱点とは?
一方で、懸念も少なくありません。
ZOZOTOWNはこれまで、有名ブランドを囲い込むことで成功してきました。しかし、10年後にはPB比率を80%にするとのことですから、逆に言えば自社以外のブランドは残りの20%に押し込められてしまうことになります。
ZOZOはあくまでPBをベーシックな商品に限るとしいていますが、PB比率を80%に引き上げるとすればベーシック商品だけでは収まらないでしょう。そうなると、出店するブランドと直接バッティングしてしまうのです。
優先順位を下げられたブランドは、反旗を翻して他のオンラインモールに出店することもあるでしょう。他のモールにとってはつけ入るチャンスとなるかもしれません。
もう一つの問題は、PBの品質をどこまで上げられるかということです。
いくらサイズ感がぴったりでも、商品の質が悪ければ顧客は離れてしまいます。ここは、長年SPAとして改善を重ねてきたユニクロとは雲泥の差があります。
ベーシックという商品性を考えても、ユニクロと完全に競合することになります。商品性で追いつくまでにはまだまだ何年もかかることが懸念されるのです。ここがオンラインで「場」だけを提供するビジネスと、実際に商品を作るビジネスとの最大の違いと言えるでしょう。
覇者ユニクロは「情報製造小売業」へ
ZOZOの野望を迎え撃つ形になるのがユニクロです。長期間にわたって、アパレル業界の覇者として拡大を続けています。
国内だけに飽き足らず、海外へも積極的に進出し、成功を収めています。2018年8月期の第3四半期では、海外ユニクロ事業の売上収益が国内ユニクロ事業を上回りました。
国内では消費者をがっちり掴んで安定し、海外でもグレーターチャイナ(中国・台湾・香港)を中心に右肩上がりです。ジーユーなどのサブブランドの浸透も進んでおり、現在のところ死角はないように見えます。
唯一の弱点を探すとしたら、Eコマースでしょう。ショッピングサイトはお世辞にも使いやすいとは言えず、店舗の補完的な要素を強く感じます。売上高も2017年8月期に487億円と、商品取扱高2,705億円を誇るZOZOに大きく後れを取ります。
この部分を強化すべく、柳井社長は「情報製造小売業」を掲げ、Eコマースの強化を宣言しました。アパレル界の巨人が、いよいよ未開拓の分野に本腰を入れるというわけです。