fbpx

株高・収益増でも給料は上がらない…。日本人がこの不条理から抜け出す方法は?=斎藤満

海外市場にも暗雲

しかし、中国人の爆買いが一服し、天候異変・災害で外国人観光客も鈍り、輸出ではトランプ氏の貿易戦争が日本の自動車業界などにも及びつつあります。

メキシコや中国経由で米国に輸出するのも難しくなりました。米国とともに日本の輸出の約2割を占める中国向けも、中国経済の悪化や、米中摩擦によっては抑えざるを得なくなります。国内市場の低迷を海外でカバーしてきた企業にとっては、不透明要素が強まってきました

しかも、日銀の金融政策も、こっそり緩和を縮小しつつあり、米国から円安へのけん制が出やすくなっていて、輸出の量と採算の両面で、海外収益が上がりにくくなっています。利益を国内投資に回さず、内部留保に積み上げてきたつけが、これから響いてくる可能性があります。

新興国が破綻へ向かっている

また、日本だけでなく、主要中銀が長らく大規模緩和を続けてきたため、中国や新興市場が急ピッチで債務を拡大し、これが成長を支えてきました。しかし、新興国の債務がリーマン危機前の2倍以上に膨らんだところで、米国はすでに利上げ、資産売却を進め、ECBも年内で資産買い入れを停止します。新興国では通貨防衛の利上げを余儀なくされるところも少なくありません。

そうなると、新興国の借金経済が破綻し、トルコやアルゼンチン以外にも新興国不安が広がります。中国も大きな債務問題を抱えていて、当局がその調整に入りました。日本にとって、輸出市場の環境はそれだけ悪化し、成長が減速する可能性が高まります。

中国や新興国不安だけでも市場に混乱を招くことがありますが、経済成長に響き、企業収益に不安が出ると、高値にあるだけ株価の反落リスクも大きくなります。

政治的に分配のゆがみを是正する必要がある

世界的な大規模緩和による資産価格押上げも曲がり角に来ています。超緩和から正常化に向かうだけで、資金の流れが変わり、しかも世界貿易を圧迫しかねないトランプ政権が貿易戦争を拡大しています。国内市場の安定的拡大が今まで以上に重要になりますが、日本では賃金抑制、人口減で行き詰まっています。

企業が依然として人件費拡大に臆病であれば、税制などを駆使して、政治的に分配のゆがみを是正する必要もあります。

Next: 政策転換は必須。企業を儲けさせても、労働者にお金は行かない…

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー