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不正投票も再集計騒ぎも根絶へ。ブロックチェーンによる選挙革命が始まっている=高島康司

不正行為の防止とブロックチェーン

ブロックチェーンとは、ハッシュ関数で暗号化されたデジタルデータのブロックを、複数のコピーが存在する分散台帳に書き込む技術である。

データが台帳に記録されるためには、マイニングと呼ばれる暗号解読の作業が必要になる。そして、書き込まれたすべてのブロックは相互にチェーンで結ばれているので、任意のデータを変更したり改ざんすると、分散台帳全体が壊れてしまう。

だからブロックチェーンは、データのどのような不正操作も基本的にできない仕組みになっている。既存のシステムでは、データをハッキングなどの不正アクセスから守るために、セキュリティーの高い中央集権的なサーバが必要だったが、ブロックチェーンではこうしたサーバの必要性はない。ブロックチェーンであれば、比較的に安いコストで高度なデータ管理のシステムが構築できる

さらに、プログラムの自動実行機能を内蔵したスマートコントラクトと呼ばれるイーサリアムのブロックチェーンであれば、条件さえ指定すれば契約内容は自動的に実行される。請求書の発行、代金の支払い、製品の発送など、日常的なルーチーンのプロセスを自動化することができる。

このようなブロックチェーンの機能から見ると、投票のシステムは比較的に構築しやすい。有権者が投票した結果を、有権者の名前とともに分散台帳に書き込めばよいだけだ。プログラムの自動実行機能を持つスマートコントラクトのような高度なシステムは必要がない。

左右が対立する感情的に激高した選挙戦を背景として、勝利するためならどの陣営もあらゆる形態の不正を犯す可能性が高くなっているいまの状況では、不正の防止が確実にできるブロックチェーンによる投票システムには期待感も高い。導入が急がれている

ブロックチェーン投票システムの問題点

このように、投票システムにおけるブロックチェーンの導入への期待は高いものの、越えなければならないハードルもいくつか存在している。

<問題点その1:秘密投票の原則の維持>

民主主義の前提である投票は、だれがどの候補者に投票したのか分からない「秘密投票」であることはもっとも重要な原則である。そうしないと、特定の候補者に投票するような脅しや買収も横行することになる。

一方、ブロックチェーンは分散台帳には誰でもアクセスし、内容を見ることができるシステムである。こうした公開性によって、書き込まれたデータの信頼性が確認できる。

このようなブロックチェーンを秘密投票が原則の投票に適用するとき、困難なハードルが出てくる。投票結果をブロックチェーンの分散台帳に書き込む場合、投票者の氏名とその投票結果がデータとしてブロック化され、書き込まれる。そうすることで、投票結果は変更不可能になる。

しかしこの場合、既存の分散台帳の方式だと、誰がどの候補者に投票したのか簡単に分かってしまう。これは、民主主義の根幹になっている秘密投票の原則を崩壊させることにもなりかねない。これは、絶対に避けなければならない。

すると、オープンな分散台帳に書き込むブロックチェーンのシステムを投票に適用するためには、有権者を登録し、その名前を暗号化するための別のシステムが必要になる。暗号で投票結果がブロックチェーンに書き込まれる。また、有権者本人だけに暗号が提供されるなら、その人だけが自分の投票結果が正しくブロックチェーンに記録されたかどうかを確認できる。

このシステムは一見するとよいアイデアに見える。しかし、この投票システムでは、有権者を登録し、それを暗号化するシステムがハッキングされてしまうと、秘密投票の原則は崩れてしまう。誰がどの候補者に投票したのか分かるからだ。

いまのところ、このブロックチェーンを補完するシステムがどのようなものになるのか、未定である。ただ、有力なアイデアとして出ているのが、独自トークンの発行である。有権者が登録し、個人情報が記録されると、証拠に独自のトークンが与えられる。これを持つ有権者は、自分の投票結果だけを参照できるというシステムだ。

Next: 投票システム大変革への道のりは多難。すでに始まっている実験は?

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